画像引用:恐蟹類(wikipedia)
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古生代(カンブリア紀)の海には、現在では考えられないような姿をした巨大な節足動物(恐蟹類とも呼ばれる)が大繁栄していました。
1~3(海綿動物)・4(腕足動物)・5:バージェスソキータ (環形動物)・6~7(鰓曳動物)・8~16(節足動物)・17(葉足動物)・18~20(脊索動物)・21~25(節足動物)
パンブデルリオンほ、頭部に巨大な前部付属肢を持ち、これを使って他の生物を捕獲・捕食していました。胴体は柔らかく、対になった鰭と歩脚を持つ体節から構成されていました。カンブリア紀の生物のなかでもかなり巨大な生物で、最大で体長50cmオーバーであったと考えられています。巨大な前部付属肢を持つため捕食生物と考えられていますが、それ自体は柔らかい構造のため感覚器で、食性は腐肉食とする説もあります。また、鰭も小さく条がないことから遊泳力は弱く、底生生活をしていたと推測されています。
ケリグマケラは、頭部には巨大な棘状の前部付属肢を持ち、11節ある胴部にはそれぞれ対になった鰭と歩脚がありました。最大体長は6cmほどと推測されており、尾部には体長と等しいほど長い尾がありました。頑丈な鰭を持つことから遊泳性の捕食者であったと推測されています。なお、頭部の巨大な前部付属肢は柔らかく、捕食には使われない単なる感覚器であったと考えられています。
オパビニアは、頭部に長い吻を持ち、そこに融合したハサミ状の前部付属肢と5つの眼を持っていました。胴部は15節あり、それぞれに鰭と鰓を備えていました。胴部体節に歩脚が存在したかどうかは未だ議論されており、結論がでていません。身体の最後の節は特化した尾となっていました。体長は最大で10cm程度であったと考えられています。ある程度発達した鰭を持つものの、底生捕食者であったと考えられています。その自在で長い吻を用いて海底の小動物を捕食したいたと推測されています。
ユタウロラは、頭部に発達した吻を持っていました。15節からなる胴の各体節には鰓と鰭があり、おそらく小さな歩脚もあったと推測されています。尾部は現生のエビのように発達した尾扇になっていました。体長は3cm前後であったと考えられています。遊泳力のある底生捕食者で、その吻を使って海底の小動物を捕食していたと推測されています。
アノマロカリスは、若干扁平な楕円形をしており、頭部と胴部の境目にくびれがあり区別することが可能です。頭部上面には体躯に対して大型の眼があり、横方向に飛び出しています。口器は円筒状をしており、その前部には一対の触手を持っていました。胴部には横に大きく突出したヒレ状の構造物が13対あり、これを使って遊泳したと考えられています。カンブリア紀の生物としてはかなり大型の部類で、最大で体長10cmを超える種もあったと考えられています。この時代の頂点捕食者であったと考えられています。ただし、どのように獲物を捕獲し、どのように摂食したかは未だ完全には解明されていません。口器には「噛む」機能はなく筒状で、その内側には歯状構造がびっしりと生えており、この歯は消化管の中まで生えていました。なんらかの形で捕獲した獲物を、丸飲みに近い形で吸い込み、消化管内で砕いて消化していたようです。
アンプレクトベルアは、頭部に鋭い棘をともなう鋏状の前部付属肢を持っています。胴部は3節の頸と11節の胴から構成されており、各胴には一対の鰭がありました。尾部には尾を持っていました。この時代としては非常に大型の種類で、最大で体長50cm近くあったと考えられています。ものを掴むことができる構造の前部付属肢は、獲物の捕獲に使われていたとされています。遊泳性の捕食者で、その、大きさからも頂点捕食者であったと推測されています。
ライララパクスは、頭部に10節以上から構成された前部付属肢を持ち、獲物の捕獲に使われていたと考えられています。胴部は頸にあたる節とそれぞれ1対の鰭を持つ8節から構成されていました。尾部には1対の尾毛がありました。遊泳力の強い捕食者であったと推測されています。また、幼生の化石にも発達した前部付属肢があることから、幼生期も捕食活動を行っていたと思われます。体長10cm前後でした。
ペイトイアは、頭部に縦方向に動作する前部付属肢を持っていました。また、口器は十字放射状で全部で32個の歯があったことが化石に残っています。胴部は3節の頸部と11節の胴部から構成されており、各節には鰓と鰭が1対ありました。特化した尾部を持たなかったのも特徴です。遊泳性の捕食動物であったと考えられています。前部付属肢が下向きであったことから、底生の小動物を海底から捕食してたと考えられています。
フルディアは、小さな前部付属肢・発達した眼・十字放射状の口器を頭部に持っており、続く胴部にはそれぞれに鰓と鰭を備えた7~9節から構成される胴がありました。また、最後の体節は1対の短い尾を持つ尾部となっていました。大きな種で体長30cm前後、小さな種で体長10cm未満でした。その身体の構造から、遊泳力も有する底生捕食者であったと考えられており、海底の砂泥のなかから前付属肢を使って餌となる小生物を捕まえていたと考えられています。
スタンレイカリスは、頭部に下向きの前部付属肢・発達した眼・放射状の口器を持ち、それに続く17節からなる胴部を持っていました。最後の体節は1対の尾を持つ尾部となっていました。大きさは体長10cm弱であったと考えられています。遊泳に優れた流線型の体形と視界の広い複眼構造をしていることから、かなり活発な遊泳性捕食者であったと推測されています。
カンブロラスターは、特徴的な甲皮で覆われた頭部を持っていました。頭部には前部付属肢や眼・口があり、胴部は短い鰭を持つ8節から構成されていました。尾部には小さな尾扇がありました。大きさは体長30cm弱と恐蟹類としてはかなりの大型種でした。その身体の構造的特徴から底生生活をしていたと考えられていますが、若干の遊泳も可能であったと推測されています。
エーギロカシスは、巨大な頭部を持つ、古生代最後のデボン紀まで生き残った数少ない恐蟹類の一種です。頭部には前部付属肢を持っていたことは判明していますが、目と口に関しては化石が未出土のため構造は不明です。頭部に続いてそれぞれ1対の鰭を持つ10節からなる胴部がありました。最終体節は小さな尾になっていました。大きさは2m前後もあったと推測されており、恐蟹類としては最大の種です。魚類が進化してきた古生代末期の海で捕食者としては競合できず、プランクトンを濾過食するプランクトンフィーダーとして生き残っていたと考えられています。
これらの代表種を博物館学芸員の筆者が解説します。
あわせて、側進化群の葉足動物や古生代の真節足動物(主に鋏角類)についてもご紹介・解説していきます。
恐蟹類とは?
恐蟹類(学名: Dinocaridida[もしくは Dinocarida)とは、基盤的な節足動物と考えられる古生物の分類群である。分類学上は恐蟹綱 (きょうかいこう) とされる。アノマロカリスなどのラディオドンタ類と、オパビニアなどのオパビニア類が含まれる。体は先頭に発達した前部付属肢、両筋に数多くの鰭をもつ。構成種は主にカンブリア紀に生息した海棲動物だが、オルドビス紀とデボン紀の種類もわずかに知られている。
恐蟹類は古生代における節足動物の最進化形の生物群で、原始的な節足動物(環形動物から進化して間もないタイプ)の体節が全て相似形なのに対し、恐蟹類は頭部とされる体節群、つまり各体節が触角・顎などに特化したものの集合体を持っています。
そして、この頭部(機能特化した体節群)の後ろには従来のような相似形の多数の体節(移動のための脚または遊泳脚をそれぞれ対で持つ)が続きます。
さらに、これらいわゆる胴体の後ろには移動補助(舵のような役目)のために特化した体節群=尾部が続きます。
なお、恐蟹類は「バージェス動物群」と呼称されることもありますが、これは生物学的な分類単位による区分ではありません。
バージェス動物群とは?
バージェス動物群とは、カナダ・ブリティッシュコロンビア州に存在するバージェス頁岩の岩中から化石として発見されている動物の総称です。バージェス頁岩の形成年代は、約5億年前の古生代(カンブリア紀ウリューアン期)にあたり、この時代に生きていた古代生物群のことを「バージェス動物群」と呼んでいます。
バージェス動物群には以下のような動物群が含まれています。
1~3(海綿動物)・4(腕足動物)・5:バージェスソキータ (環形動物)・6~7(鰓曳動物)・8~16(節足動物)・17(葉足動物)・18~20(脊索動物)・21~25(節足動物)
ここに含まれる節足動物のなかには現生のカブトガニやサソリの仲間である鋏角類の始祖も含まれていますが、多く絶滅してしまった節足動物群=恐蟹類でした。
恐蟹類の分類的位置づけ
恐蟹類は節足動物のプロトタイプ的な動物群で、その系統樹のものは全て絶滅してしまいました。節足動物の始祖として考えられるのは環形動物で、そこから進化したミッシングリンクとも言われるカギムシの仲間(有爪動物)→クマムシの仲間(緩歩動物)→節足動物と進化の過程を辿ったと考えられています。
カンブリア紀にはすでに現生の真節足動物の仲間(鋏角類)も誕生いましたが、この時代ではプロトタイプ節足動物である恐蟹類のほうが繫栄していました。また、脇道の進化(側系統群)として恐蟹類に似た葉足動物も栄えていました。
しかしながら、約4億8800万年前に起こったカンブリア末期大絶滅により、恐蟹類と葉足類は全て絶滅してしまいました。
※ごく一部の恐蟹類はカンブリア紀よりも後の時代であるデボン紀まで生き残っていましたが、デボン紀の大量絶滅により完全に姿を消しました。
なお、恐蟹類には下記のように分類される化石生物群がいました。
主な恐蟹類の分類
パンブデルリオン属 Pambdelurion
オムニデンス属 Omnidens
ケリグマケラ属 Kerygmachela
ミエリテリン属 Mieridduryn
オパビニア科 Opabiniidae
オパビニア属 Opabinia
ユタウロラ属 Utaurora
ラディオドンタ目 Radiodonta
ククメリクルス属 Cucumericrus
カリョシントリプス属 Caryosyntrips
パラノマロカリス属 Paranomalocaris
ラミナカリス属 Laminacaris
ホウカリス属 Houcaris [55]
インノヴァティオカリス属 Innovatiocaris
アノマロカリス科 Anomalocarididae
アノマロカリス属 Anomalocaris
レニシカリス属 Lenisicaris
アンプレクトベルア科 Amplectobeluidae
アンプレクトベルア属 Amplectobelua
ライララパクス属 Lyrarapax
ラムスコルディア属 Ramskoeldia
タミシオカリス科 Tamisiocarididae
タミシオカリス属 Tamisiocaris
フルディア科 Hurdiidae
ペイトイア属 Peytoia
フルディア属 Hurdia
スタンレイカリス属 Stanleycaris
シンダーハンネス属 Schinderhannes
エーギロカシス属 Aegirocassis
パーヴァンティア属 Pahvantia
ウースリナカリス属 Ursulinacaris
カンブロラスター属 Cambroraster
ゼンヘカリス属 Zhenghecaris
コーダティカリス属 Cordaticaris
ブッカスピネア属 Buccaspinea
ティタノコリス属 Titanokorys
次の項目からは、恐蟹類の代表的な各属ごとにその特徴(形態・生態など)を解説していきます。
パンブデルリオン属 Pambdelurion
パンブデルリオンほ、頭部に巨大な前部付属肢を持ち、これを使って他の生物を捕獲・捕食していました。胴体は柔らかく、対になった鰭と歩脚を持つ体節から構成されていました。カンブリア紀の生物のなかでもかなり巨大な生物で、最大で体長50cmオーバーであったと考えられています。巨大な前部付属肢を持つため捕食生物と考えられていますが、それ自体は柔らかい構造のため感覚器で、食性は腐肉食とする説もあります。また、鰭も小さく条がないことから遊泳力は弱く、底生生活をしていたと推測されています。
ケリグマケラ属 Kerygmachela
ケリグマケラは、頭部には巨大な棘状の前部付属肢を持ち、11節ある胴部にはそれぞれ対になった鰭と歩脚がありました。最大体長は6cmほどと推測されており、尾部には体長と等しいほど長い尾がありました。頑丈な鰭を持つことから遊泳性の捕食者であったと推測されています。なお、頭部の巨大な前部付属肢は柔らかく、捕食には使われない単なる感覚器であったと考えられています。
オパビニア属 Opabinia
オパビニアは、頭部に長い吻を持ち、そこに融合したハサミ状の前部付属肢と5つの眼を持っていました。胴部は15節あり、それぞれに鰭と鰓を備えていました。胴部体節に歩脚が存在したかどうかは未だ議論されており、結論がでていません。身体の最後の節は特化した尾となっていました。体長は最大で10cm程度であったと考えられています。ある程度発達した鰭を持つものの、底生捕食者であったと考えられています。その自在で長い吻を用いて海底の小動物を捕食したいたと推測されています。
ユタウロラ属 Utaurora
ユタウロラは、頭部に発達した吻を持っていました。15節からなる胴の各体節には鰓と鰭があり、おそらく小さな歩脚もあったと推測されています。尾部は現生のエビのように発達した尾扇になっていました。体長は3cm前後であったと考えられています。遊泳力のある底生捕食者で、その吻を使って海底の小動物を捕食していたと推測されています。
アノマロカリス属 Anomalocaris
アノマロカリスは、若干扁平な楕円形をしており、頭部と胴部の境目にくびれがあり区別することが可能です。頭部上面には体躯に対して大型の眼があり、横方向に飛び出しています。口器は円筒状をしており、その前部には一対の触手を持っていました。胴部には横に大きく突出したヒレ状の構造物が13対あり、これを使って遊泳したと考えられています。カンブリア紀の生物としてはかなり大型の部類で、最大で体長10cmを超える種もあったと考えられています。この時代の頂点捕食者であったと考えられています。ただし、どのように獲物を捕獲し、どのように摂食したかは未だ完全には解明されていません。口器には「噛む」機能はなく筒状で、その内側には歯状構造がびっしりと生えており、この歯は消化管の中まで生えていました。なんらかの形で捕獲した獲物を、丸飲みに近い形で吸い込み、消化管内で砕いて消化していたようです。
アンプレクトベルア属 Amplectobelua
アンプレクトベルアは、頭部に鋭い棘をともなう鋏状の前部付属肢を持っています。胴部は3節の頸と11節の胴から構成されており、各胴には一対の鰭がありました。尾部には尾を持っていました。この時代としては非常に大型の種類で、最大で体長50cm近くあったと考えられています。ものを掴むことができる構造の前部付属肢は、獲物の捕獲に使われていたとされています。遊泳性の捕食者で、その、大きさからも頂点捕食者であったと推測されています。
ライララパクス属 Lyrarapax
ライララパクスは、頭部に10節以上から構成された前部付属肢を持ち、獲物の捕獲に使われていたと考えられています。胴部は頸にあたる節とそれぞれ1対の鰭を持つ8節から構成されていました。尾部には1対の尾毛がありました。遊泳力の強い捕食者であったと推測されています。また、幼生の化石にも発達した前部付属肢があることから、幼生期も捕食活動を行っていたと思われます。体長10cm前後でした。
ペイトイア属 Peytoia
ペイトイアは、頭部に縦方向に動作する前部付属肢を持っていました。また、口器は十字放射状で全部で32個の歯があったことが化石に残っています。胴部は3節の頸部と11節の胴部から構成されており、各節には鰓と鰭が1対ありました。特化した尾部を持たなかったのも特徴です。遊泳性の捕食動物であったと考えられています。前部付属肢が下向きであったことから、底生の小動物を海底から捕食してたと考えられています。
フルディア属 Hurdia
フルディアは、小さな前部付属肢・発達した眼・十字放射状の口器を頭部に持っており、続く胴部にはそれぞれに鰓と鰭を備えた7~9節から構成される胴がありました。また、最後の体節は1対の短い尾を持つ尾部となっていました。大きな種で体長30cm前後、小さな種で体長10cm未満でした。その身体の構造から、遊泳力も有する底生捕食者であったと考えられており、海底の砂泥のなかから前付属肢を使って餌となる小生物を捕まえていたと考えられています。
スタンレイカリス属 Stanleycaris
スタンレイカリスは、頭部に下向きの前部付属肢・発達した眼・放射状の口器を持ち、それに続く17節からなる胴部を持っていました。最後の体節は1対の尾を持つ尾部となっていました。大きさは体長10cm弱であったと考えられています。遊泳に優れた流線型の体形と視界の広い複眼構造をしていることから、かなり活発な遊泳性捕食者であったと推測されています。
カンブロラスター属 Cambroraster
カンブロラスターは、特徴的な甲皮で覆われた頭部を持っていました。頭部には前部付属肢や眼・口があり、胴部は短い鰭を持つ8節から構成されていました。尾部には小さな尾扇がありました。大きさは体長30cm弱と恐蟹類としてはかなりの大型種でした。その身体の構造的特徴から底生生活をしていたと考えられていますが、若干の遊泳も可能であったと推測されています。
エーギロカシス属 Aegirocassis
エーギロカシスは、巨大な頭部を持つ、古生代最後のデボン紀まで生き残った数少ない恐蟹類の一種です。頭部には前部付属肢を持っていたことは判明していますが、目と口に関しては化石が未出土のため構造は不明です。頭部に続いてそれぞれ1対の鰭を持つ10節からなる胴部がありました。最終体節は小さな尾になっていました。大きさは2m前後もあったと推測されており、恐蟹類としては最大の種です。魚類が進化してきた古生代末期の海で捕食者としては競合できず、プランクトンを濾過食するプランクトンフィーダーとして生き残っていたと考えられています。
各恐蟹類の個別解説記事
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側進化群の葉足動物とは?
葉足動物はさまざまな生物群が爆発的に進化した「カンブリア爆発」において節足動物の共通始祖と考えられる有爪動物や緩歩動物から側進化したと考えられている「節足動物に極めて近縁な動物群」で、アイシェアイア類・ハルキゲニア類・ルオリシャニア類・シベリオン類など30種以上の化石種から構成される動物門の一つです。
形態的特徴
葉足動物に共通の特徴として、頭部には付属肢と未発達な複眼・口器があり、胴部は円柱状に近い構造(始祖の有爪動物の形態を残す)をしており各体節に1対の葉足を持つことが挙げられます。また、最後部の体節も尾部として特化した体節になっていました。
アイシェアイア類
アイシュアイアは、原始的な葉足動物で、環形動物に突起状の肢が生えたような形態をしています。眼や口器も未発達でしたが、頭部には付属肢状の突起が見られました。体長は最大で6cm程度であったと推測されています。海底を這うように歩いて移動する生活をしており、海綿の化石と同時に発見されることから海綿動物を捕食してたと考えられています。
ハルキゲニア類
ハルキゲニアは、原始的な葉足動物で、頭部は単純な構造をしており付属肢などは見られませんでした。円柱状の胴部には10対の脚と7対の棘がありました。脚のなかでも前方の数本は触手状の形態をしていました。大きさは体長2cm前後であったとされています。脚を使って海底を歩いて移動していたと考えられており、海綿と同時に化石が出土することから、海綿動物を食べていたと考えられています。また、触手状の前方の脚を使って海綿の表面を削り取り、その肉片を口まで運んでいたと推測されています。
シベリオン類
シベリオン
シベリオンは、頭部に巨大な前部付属肢を持ち、9節から構成される胴部には各一対の脚がありました。あまり特化はしていないものの最終節は尾部になっていました。その形態から海底を歩行する底生生活者であったと推測されていますが、食性などはまだ解明されていません。体長7cm程度であったと考えられています。
メガディクティオン
メガディクティオンは、頭部に巨大な前部付属肢と下向きの口器(放射状)を持ち、円柱形の胴部は各一対の脚(葉足)を備えた11〜13節から構成されていました。葉足動物としては巨大で、体長20cm前後もあったと考えられています。その形態から底生捕食者(または腐肉食)であったと考えられていますが、具体的な餌が何であったかは解明されていません。
各葉足動物の個別解説記事
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カンブリア紀の真節足動物
現生のエビカニ類の始祖ともなる初期の真節足動物もカンブリア紀にはすでに出現していました。形態はいずれも原始的で、恐蟹類と外見的には似ていましたが、頑丈な外骨格を持つこと、関節肢を持つことなどが異なっていました。
キリンシア類
キリンシア
キリンシアは、背甲に覆われた頭部を持ち、そこには5つの複眼と前部付属肢および口器を備えていました。25節からなる胴部は各体節に背板があり、各一対の付属肢がありました。尾部は5節の体節が合体した「合体節」で尾扇になっていました。体長は5cm前後であったと推測されています。遊泳性の活発な捕食者で、視力により餌を探していたと考えられています。尾扇の構造からもかなり優れた遊泳・旋回能力があったとされています。
メガケイラ類
アラルコメネウス
アラルコメネウスは、全体が背甲に覆われ、頭部には一対の大付属肢と二対の複眼および頑丈な顎基がありました。胴部はそれぞれに一対の脚(内肢・外肢)がある11節から構成されており、尾節はヘラ状になっていました。体長6cm前後であったと考えられています。大付属肢の鞭毛と複眼によって獲物を探した底生捕食者であったと考えられています。海底を歩く時は内肢を使い、泳ぐ時は外肢を用いたものと推測されています。
フォルティフォルケプス
フォルティフォルケプスは、頭部に4本の爪を備えた大付属肢・複眼・口器を持ち、胴部は各一対の脚(内肢・外肢)のある20節前後から構成されていました。また、尾部は長さの違う複数枚からできた尾扇になっていました。体長4cm前後だったと考えられています。外肢を使った遊泳性力の高いな捕食者であったと考えられています。また、海底を移動するときは内肢を使ったものとされています。
ハイコウカリス
ハイコウカリスは、背甲で覆われた頭部・胴部(11節)・尾部から構成されており、頭部には3本の爪を持っ大付属肢・複眼・口器がありました。胴部には各節に一対ずつ内肢(歩行)と外肢(遊泳)がありました。尾部は棘状になっていたと推測されています。体長4cm前後でした。他のメガケイラ類同様に遊泳性の捕食者で、海底を這って餌を探すこともできました。
レアンコイリア
レアンコイリアは、頭部と11節の扁平な胴部および棘状の尾部から構成されていました。頭部は鞭毛を伴った大付属肢が特徴的でした。胴部各節にはそれぞれ内肢と外肢があり歩行と遊泳で使い分けていたと考えられています。体長は7cm程でした。扁平な身体と鞭毛のある特徴的な大付属肢を持つことから、海底を這って餌を探す捕食者であったと考えられています。
ヨホイア
ヨホイアは、全身が背甲に覆われており、頭部には4本爪を備えた大付属肢と複眼・口器を持っていました。胴部は13節から構成されており、それぞれ一対の内肢・外肢がありました。最後端の尾節はヘラ状をしていました。体長2〜3cmだったとされています。大付属肢は下から前方に伸びる構造をしており、このことから底生の捕食者(または腐肉食)であったと推測されています。
フキシャンフィア類
フーシェンフイア
フキシャンフィアは、頭部に複眼・触角・付属肢・口器を持っていました。胴部はあきらかに胸部と腹部に分化しており、最後端節は三叉状をしていました。体長8cm程になったと推測されています。遊泳もできる底生生活者で、捕食性または腐肉食性と考えられています。
チェンジャンゴカリス
チェンジャンゴカリスは、背甲に覆われた頭部に触角・付属肢・腹部・口器を持っていました。その後ろに一対の脚を備えた23節の胴部が続き、後方数節は尾部となっていました。底生捕食者(または腐肉食)と考えられています。最大推測体長は10cmです。底生捕食者で、内肢を使って泥底の小動物をかき集めて捕まえていたと推測されています。
ハベリア類
ハベリア
ハベリアは、背甲に覆われた頭部に複数の触角状の付属肢と一対の大顎・二対の小顎を持ち、12節ある胴部の各体節には一対の内肢と外肢を備えていました。また、尾部は長い針状で体長ほどもありました。最大で3cm程だったと考えられています。発達した顎器を持つことから、他の小型甲殻類をも捕食する底生捕食者だったと推測されています。
サンクタカリス
サンクタカリスは、触角状になった複数の前部付属肢を頭部に持ち、11節からなる胴部各節にはそれぞれ内肢(歩脚)と外肢(遊泳脚)を持っていました。頭部と胴部は半円状の背甲で覆われ、尾節は扇型をしていました。最大で体長9cmほどであったと考えられています。
モリソニア
モリソニアは、頭部に一対の眼と鋏角・三対の歩脚型付属肢・顎器(大顎一対と小顎二対)を備えていました。7節から構成される胴部の各体節にはそれぞれ一対の内肢(歩脚)と外肢(遊泳脚)があり、後部三節は融合して尾部を形成していました。最大で8cm程になったと考えられています。歩脚型前部付属肢が最大の特徴で、後に出現する胴部に脚を持たない鋏角類のプロトタイプ的な形態であったと言えます。海底を這う捕食者で、移動には主に歩脚型前部付属肢が使われていたと推測されています。
絶滅真節足動物の個別解説記事
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古生代(シルル紀以降)の鋏角類
カンブリア紀末期の大絶滅でほぼ全ての恐蟹類は姿を消してしまいましたが、真節足動物の始祖である鋏角類は続くオルドビス紀~シルル紀~デボン紀に大繁栄をしました。
オオウミサソリに代表される原始鋏角類は高等魚類のいない古代の海で巨大化し、頂点捕食者として君臨したのです。
ダイオウウミサソリの仲間では、その体長は2mオーバーにまで巨大化しました。
▼関連記事
なお、シルル紀以降に繁栄した主な鋏角類には以下のような種類があります。
オファルコス
オファルコスは、頭部に鋏角と複数の内肢および外肢を持っていました。第7付属肢はパドル状になっており、胴部には歩行肢はなく蓋板となっていました(遊泳と呼吸に使用)。尾部は尖った剣状になっていました。最大でも体長1cmに満たない小さな節足動物でした。外肢で餌を探し、内肢で餌を掴んで食べていた底生捕食者(または腐肉食)であったと推測されています。
ダイバステリウム
ダイバステリウムは、カブトガニに似た形をしており、背甲に覆われた頭部には一対の鋏角のほかに五対の内肢(歩脚)および外肢(感覚器)がありました。腹部の各体節には呼吸と遊泳に使う蓋板があり、尾部は尖った剣状になっていました。体長は2〜3cmでした。歩脚を使って海底を歩き回り、感覚器の外肢を使って餌を探していたと考えられています。
ハラフシカブトガニ
ハラフシカブトガニは、1枚の背甲に覆われた複数の体節が融合した前体と9〜11節の後体から構成されており、前体には複数の歩脚がありました。最小の種で体長1cm、最大の種で体長15cm程でした。前体の歩脚を使って海底を歩いていた底生捕食者(または腐肉食)であったと推測されています。
カスマタスピス
カスマタスピスは、ハラフシカブトガニとウミサソリの中間的な外見をしており、多くの種は細長い形状をしていました。このため、ネジムシとも呼ばれます。全長1cmの小さな種から全長30cm近い種まで知られています。底生捕食者(または腐肉食)であったと考えられています。
アキュティラムス
アキュティラムスは、頭部に6対の付属肢を持ち、最前肢はハサミ状の鋏角、2〜5肢は歩脚、最後肢は遊泳脚になっていました。眼は単眼と複眼のそれぞれ一対を持っていました。胴部は12節から構成されており、最後はヘラ状の尾部になっていました。最大種では体長2mにもなったと考えられています。底生の捕食者(または腐肉食)であったと考えられています。あまり移動力は高くなかったと考えられており、捕食者であったとしても、おそらく待ち伏せ型であったと推測されています。
メガラクネ
メガラクネは、ウミサソリ類のなかでも「胴部が短い」という変わった特徴を持っています。このため、化石発見当初はクモ類と誤認されていました。かなり大型で体長50cm程だったと考えられています。生態に関しては不明な点が多く、詳しくは解明されていませんが、底生捕食者(または腐肉食)だったと推測されています。
メガログラプトゥス
メガログラプトゥスは、6対の前部付属肢を持っていましたが、特に第2肢が非常に強大に発達しているのが特徴です。第5肢は他の多くのウミサソリ類同様に遊泳脚となっていました。胴部は細長く、尾部はハサミ状をしており、実際にものを挟む機能があったと考えられています。体長は最大で50cm程でした。強大な第2肢を海底の泥の中に突っ込み、小動物を捕食していたと推測されています。
スティロヌルス
スティロヌルスは、5対の歩脚を持っており、特に後方の二対は非常に長大でした。尾部は長い針状になっていました。底生捕食者(または腐肉食)であったと考えられています。
ミクソプテルス
ミクソプテルスは、ウミサソリ類の典型的なフォルムをしており、頭部には6対の付属肢があります。最前肢は鋏角になっており、第2肢が強大な捕獲肢となっています。他の多くのウミサソリ類同様に第5肢は遊泳脚です。尾部は細長く針状をしていました。最大で80cm弱になったと考えられています。待ち伏せ型捕食者で、海底の泥の中に潜って獲物が近づくのを待っていたと推測されています。
エレトプテルス
エレトプテルスは、最前肢である鋏角が発達しまハサミ状になっていました。第5肢は遊泳脚としてパドル状をしており、尾部も遊泳に有利な大きなヘラ状をしていました。最大で体長1mを超えたと考えられています。遊泳力に優れていたと考えられており、積極的に獲物を追尾して捕獲する捕食者であったと推測されています。
プテリゴトゥス
プテリゴトゥスは、鋏角が多関節のハサミ状になっていました。第2〜5肢は歩脚に、第6肢は遊泳脚になっており、尾部も遊泳に有利なヘラ状をしていました。ウミサソリ類のなかでも最大種の一つで、体長は2mにも達しました。遊泳力に優れ、捕食のために進化した鋏角も優れていたため、当時の海での頂点捕食者であったと考えられています。
個別解説記事
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