女性の筋トレブームにともない、昨今では20代だけでなく、いわゆるアラサーと呼ばれる30代女性の筋力トレーニングも盛んになってきています。
新陳代謝の活発な20代前半~中頃と違い、この年齢層ならではのトレーニングでの注意点やメニューの組み方について解説します。
ダイエット・筋力トレーニングに関する公的記載
厚生労働省によるダイエットに関する記載
一般的なダイエットは、身体活動などで消費するエネルギーよりも、食事で摂取するエネルギーを少なくすることで体重を減らします。一日の基礎代謝量は、成人男性約1,500キロカロリー、成人女性で約1,150キロカロリーです。
極端に摂取量を制限したり特定の食品のみを摂取する偏ったダイエットは、一時的には体重の減量が期待できますが、ストレスがたまるうえに必須栄養素の摂取量が不足し
(中略)
規則正しい生活を送り、食事ではエネルギー量(カロリー)を計算して、決して無理な状態とならないように調整しつつ、適度な運動を長く続けることが、ダイエットを成功させる秘訣です。
引用:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-090.html
厚生労働省によるダイエット運動に関わる記載
フィットネスとは元来は体力という意味ですが、近年は健康の維持・増進を目指して体組成(体脂肪率)の正常化・心肺機能の向上・筋力強化・筋持久力や柔軟性の向上などを行う運動のことを表すようになりました。
主な運動として、ジョギング・水泳・エアロビクスダンス・ウォーキング・サイクリング・筋肉トレーニング・ヨガ・ティラピス・ストレッチングなどがあります。
引用:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-078.html
筋力トレーニングとは
筋力トレーニング(きんりょくトレーニング)とは、骨格筋の出力・持久力の維持向上や筋肥大を目的とした運動の総称。目的の骨格筋へ抵抗(resistance)をかけることによって行うものは、レジスタンストレーニングとも呼ばれる。抵抗のかけ方にはさまざまなものがあるが、重力や慣性を利用するものや、ゴムなどによる弾性を利用するもの、油圧や空気圧による抵抗を用いるものが一般的である。重力による抵抗を利用する場合は特に、ウエイトトレーニングとも呼ばれる。
30代女性トレーニングの特徴
やや落ちてきた超回復能力に合わせたペースで実施する
20代前半~中頃の女性とアラサー女性との大きな違いは、新陳代謝の違いからくる超回復能力の減衰です。人間は20歳をピークに老化が始まると言われており、30代ともなると男性でも筋肉の回復力は落ちてきますが、回復力に関わる男性ホルモン量がそもそも少ない女性ではなおさらです。
ですので、30代アラフォー女性の筋力トレーニングは、落ちてきた超回復能力にあわせて、無理のないトレーニングプログラムを組むことが重要です。
継続することで落ちてきた基礎代謝が向上する
30代になると、超回復能力だけでなく、新陳代謝の低下にともない基礎代謝自体も若干落ちてきます。しかしながら、まだまだ若い世代ですので、筋力トレーニングを継続的に実施し筋肉量が上昇すると、落ちがちな基礎代謝を大きく向上させることも可能です。
超回復理論とは?
筋力トレーニングを行い筋繊維に負荷をかけると、筋繊維はわずかな裂傷を負い、一定の回復期間の後にトレーニング前よりも強く・太くなって回復します。この生体反応を「超回復」と呼び、筋力トレーニングとは、計画的に超回復を繰り返すことにより筋肉を強くしていく行為です。
このため、筋肉に対してレジスタンス負荷をかける頻度・間隔には十分に留意してトレーニングプログラムを組み立てる必要があります。
骨格筋の超回復期間には、それぞれ固有の回復時間があり、それは年齢や性別によって左右されますが、20~30代男性の場合、おおよそ以下のようになります。
筋肉部位ごとの超回復期間
・大胸筋(胸の筋肉):48時間
・三角筋(肩の筋肉):48時間
・上腕三頭筋(二の腕後ろの筋肉):48時間
・僧帽筋(首の後ろの筋肉):48時間
・広背筋(背中の筋肉):72時間
・上腕二頭筋(二の腕前の筋肉):48時間
・腹筋群(お腹の筋肉):24時間
・脊柱起立筋(腰の筋肉):72時間
・大臀筋(お尻に筋肉):48時間
・大腿四頭筋(太もも前の筋肉):72時間
・ハムストリングス(太もも後ろの筋肉):72時間
・前腕筋群(前腕の筋肉):24時間
・下腿三頭筋(ふくらはぎの筋肉):24時間
なお、加齢とともに超回復期間は最大2倍程度まで長くなります。また、女性は男性に比べると筋肉合成に関わるホルモン分泌量が少ないため、男性よりも超回復期間が長くなる傾向にあります。
このような、超回復理論にのっとり効率的に全身をトレーニングしていくためには、全身の筋肉を連動性によっていくつかのグループに分け、ローテーションで鍛えていく「部位分割法|スプリットトレーニング」が最適です。
30代の筋トレは週2回から始める
ここまで解説してきたことから、430代アラサー女性の筋力トレーニングは、やや落ちがちな超回復能力を考慮し、週二回の部位分割トレーニングからスタートし、基礎代謝が向上してきたら週3回に切り替えることを推奨します。
週2回メニューでの筋肉の部位わけ
筋力トレーニングの対象となる骨格筋は、その作用の連動性などから一般的に以下のようなグループに分けられます。
1.上半身前面(押す動作)のグループ
大胸筋:上腕を前方に押し出し閉じる
三角筋:上腕を上・前・横・後ろに上げる
上腕三頭筋:肘関節を伸展させる
前腕伸筋群:手首関節を伸展させる
腹筋群:体幹を屈曲・回旋させる
このほかに、小胸筋・前鋸筋・肘筋などの深層筋も含まれます。
2.上半身後面(引く動作)のグループ
僧帽筋:肩甲骨を引き寄せる
広背筋:上腕を上・前から引き寄せる
上腕二頭筋:肘関節を屈曲させる
前腕屈筋群:手首関節を屈曲させる
脊柱起立筋:体幹を伸展させる
このほかに、菱形筋・大円筋・回旋筋腱板。上腕筋などの深層筋も含まれます。
3.下半身前面(押す動作)のグループ
腸腰筋群:股関節を屈曲させる
大腿四頭筋:肘関節を伸展させる
下腿三頭筋:足首関節を伸展させる
4.下半身後面(引く動作)のグループ
臀筋群:股関節を伸展させる
ハムストリングス:膝関節を屈曲させる
内転筋群:大腿を内転させる
週2回メニューの部位組み合わせ
①上半身・下半身の押す動作の筋肉
②上半身・下半身の引く動作の筋肉
週二回の部位分割トレーニングを行う場合、上記のようなグループ分けが効率的です。
厚生労働省による超回復とトレーニング頻度に関する記載
筋肉には疲労からの回復の時間が必要です。レジスタンス運動は標的の筋肉に負荷を集中する運動ですから、その筋肉に十分な回復期間としてトレーニング間隔をあける必要があります。毎日行うのではなく、2-3日に一回程度、週あたり2-3回行うくらいの運動頻度が推奨されます。
引用:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-058.html
筋肉はレジスタンス運動を行うと筋線維の一部が破断されます。それが修復される際にもとの筋線維よりも少し太い状態になります。これを「超回復」と呼び、これを繰り返すと筋の断面積が全体として太くなり筋力が上がります。筋力のトレーニングはこの仕組みを利用して最大筋力に近い負荷でレジスタンス運動し、筋が修復されるまで2~3日の休息ののち、またレジスタンス運動でトレーニングということの繰り返しによって行われます。
引用:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-092.html
女性ダイエットトレーニングの負荷回数設定
筋力トレーニングの対象となる骨格筋は、筋繊維が束状になって構成されていますが、その筋繊維には大きく「遅筋」と「速筋」があり、速筋は「速筋繊維Ⅱa」と「速筋繊維Ⅱb」に分けられます。それぞれの特性と筋力トレーニングでの負荷設定は以下の通りです。
遅筋(遅筋繊維Ⅰ)
持久的な運動において持続的な遅い収縮(Slow)をし、酸素(Oxygen)を消費することからSO筋とも別称されます。レジスタンストレーニングで鍛えてもほとんど筋肥大しません。陸上競技で例えるなら、長距離走に必要な筋肉です。
筋力トレーニングでは20レップス以上の反復回数で挙上限界がくるような、低負荷設定で鍛えます。
速筋(速筋繊維Ⅱa)
持久要素のある瞬発的な動作において速い収縮(Fast)をし、酸素(Oxygen)を消費することからFO筋とも別称されます。レジスタンストレーニングで鍛えると筋肥大します。陸上競技で例えるなら、400~800m走に必要な筋肉です。
筋力トレーニングでは12~15レップスの反復回数で挙上限界がくるような、中負荷設定で鍛えます。
速筋(速筋繊維Ⅱb)
瞬発的な運動において爆発的な速い収縮(Fast)をし、グリコーゲン(Glycogen)を消費することからFG筋とも別称されます。レジスタンストレーニングで鍛えると強く筋肥大します。陸上競技で例えるなら、100~200m走に必要な筋肉です。
筋力トレーニングでは6~10レップスの反復回数で挙上限界がくるような、高負荷設定で鍛えます。
15~20回以上の反復回数を目安とする
このようなことから、一般的な女性の筋力トレーニングにおいては、基本的には遅筋(遅筋繊維Ⅰ)をターゲットに20回以上の反復回数で限界がくるような低負荷高レップスでセットを実施し、部分的なボリュームアップや筋力アップを狙う部位は速筋(速筋繊維Ⅱa)をターゲットに15回前後のレップスで実施します。
具体的な週2回の自宅筋トレメニュー例
①上半身・下半身の押す筋肉の自宅トレーニング
①自重スクワットまたはチューブレッグプレスを20回2セット
②腕立て伏せまたはチューブチェストプレスまたはダンベルプレスを20回2セット
③チューブチェストフライまたはダンベルフライを20回1セット
④チューブアップライトローまたはダンベルアップライトローを20回2セット
⑤チューブキックバックまたはダンベルキックバックを20回2セット
②上半身・下半身の引く筋肉の自宅トレーニング
①ブルガリアンスクワットを片足15ずつ2セット
②斜め懸垂またはチューブローイングまたはダンベルローイングを20回3セット
④クランチまたはレッグレイズまたはリバースクランチを20回3セット
具体的な週2回のジム筋トレメニュー例
①上半身・下半身の押す筋肉のジムトレーニング
①マシンレッグプレスまたはバーベルスクワットを20回2セット
②マシンレッグエクステンションを20回1セット
③マシンチェストプレスまたはバーベルベンチプレスを20回2セット
④マシンチェストフライを20回1セット
⑤マシンショルダープレスまたはバーベルアップライトローを20回2セット
⑥ケーブルキックバックまたはバーベルフレンチプレスを20回2セット
②上半身・下半身の引く筋肉のジムトレーニング
①マシンレッグカールを20回2セット
②マシンアダクションを20回2セット
③ケーブルローイングまたはバーベルデッドリフトを20回3セット
⑤ケーブルクランチを20回2セット
⑥スミスマシングッドモーニングまたはバーベルグッドモーニングを20回2セット
週3回の女性トレーニングメニュー
筋力トレーニングを継続していくことで、超回復能力も向上してきたら、週3回のトレーニングプログラムにチャレンジしてみるのもよいでしょう。
▼週3回の分割トレーニング例
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ダイエットと言えば、どうしても気にしてしまうのが体重ですが、これは筋力トレーニングによるダイエットとは相反する場合があります。
それは、単位体積あたりの筋肉と脂肪の重量差に起因していますが、詳しくは下記の記事で解説しています。
ダイエット筋トレの食事メニュー例
ダイエット筋トレのための食事の基礎知識と適切な食事メニュー例は下記の記事をご参照ください。
女性のダイエット筋トレ向き食事メニュー(具体的レシピ例)
筋トレ情報コーナーについて
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