三角筋の自重トレーニングについて、筋肉の部位別(前部・中部・後部)に種目を選定して解説します。
三角筋の構造と作用
三角筋は上腕最上部に位置し、体幹と上腕を接合している筋肉で、上腕を上・前・横・後ろに上げる作用があります。
三角筋前部:腕を前に上げる
三角筋中部:腕を横に上げる
三角筋後部:腕を後ろに上げる
▼詳しい解説
自重トレーニングと超回復
多くある誤解に、自重トレーニングはウエイトトレーニングではないので超回復は関係ないとする意見がありますが、自重トレーニングは英語での名称が「selfweight-trainning|自己体重によるウエイトトレーニング」とされるように、れっきとしたウエイトトレーニングですので、一般的なトレーニング同様に超回復を考慮した実施頻度で行うことが大切です。
ウェイトトレーニング(Weight Training)は、筋力トレーニングの1種目。バーベル、ダンベル、マシンまたは自重などを使い筋肉に負荷をかけ体を鍛えるトレーニング。主に筋力の増大、またはそれに伴う筋肉の増量などを目的とするトレーニングの総称。
狭義にはバーベルやダンベル、専用のトレーニングマシンを使用したトレーニングであり、広義にはそれに自重を利用したトレーニングも含む。
筋肉部位ごとの超回復期間
・大胸筋:48時間
・三角筋:48時間
・上腕三頭筋:48時間
・僧帽筋:48時間
・広背筋:72時間
・上腕二頭筋:48時間
・腹筋群:24時間
・脊柱起立筋:72時間
・大臀筋:48時間
・大腿四頭筋:72時間
・ハムストリングス:72時間
・前腕筋群:24時間
・下腿三頭筋:24時間
厚生労働省による超回復とトレーニング頻度に関する記載
筋肉には疲労からの回復の時間が必要です。レジスタンス運動は標的の筋肉に負荷を集中する運動ですから、その筋肉に十分な回復期間としてトレーニング間隔をあける必要があります。毎日行うのではなく、2-3日に一回程度、週あたり2-3回行うくらいの運動頻度が推奨されます。
引用:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-058.html
筋肉はレジスタンス運動を行うと筋線維の一部が破断されます。それが修復される際にもとの筋線維よりも少し太い状態になります。これを「超回復」と呼び、これを繰り返すと筋の断面積が全体として太くなり筋力が上がります。筋力のトレーニングはこの仕組みを利用して最大筋力に近い負荷でレジスタンス運動し、筋が修復されるまで2~3日の休息ののち、またレジスタンス運動でトレーニングということの繰り返しによって行われます。
引用:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-092.html
自重トレーニングの負荷回数設定
筋力トレーニングの対象となる骨格筋は、筋繊維が束状になって構成されていますが、その筋繊維には大きく「遅筋」と「速筋」があり、速筋は「速筋繊維Ⅱa」と「速筋繊維Ⅱb」に分けられます。それぞれの特性と筋力トレーニングでの負荷設定は以下の通りです。
遅筋(遅筋繊維Ⅰ)
持久的な運動において持続的な遅い収縮(Slow)をし、酸素(Oxygen)を消費することからSO筋とも別称されます。レジスタンストレーニングで鍛えてもほとんど筋肥大しません。陸上競技で例えるなら、長距離走に必要な筋肉です。
筋力トレーニングでは20レップス以上の反復回数で挙上限界がくるような、低負荷設定で鍛えます。
速筋(速筋繊維Ⅱa)
持久要素のある瞬発的な動作において速い収縮(Fast)をし、酸素(Oxygen)を消費することからFO筋とも別称されます。レジスタンストレーニングで鍛えると筋肥大します。陸上競技で例えるなら、400~800m走に必要な筋肉です。
筋力トレーニングでは12~15レップスの反復回数で挙上限界がくるような、中負荷設定で鍛えます。
速筋(速筋繊維Ⅱb)
瞬発的な運動において爆発的な速い収縮(Fast)をし、グリコーゲン(Glycogen)を消費することからFG筋とも別称されます。レジスタンストレーニングで鍛えると強く筋肥大します。陸上競技で例えるなら、100~200m走に必要な筋肉です。
筋力トレーニングでは6~10レップスの反復回数で挙上限界がくるような、高負荷設定で鍛えます。
これらのことから、速筋に刺激の加わる6~15回の反復回数で限界がくる筋力、すなわちトレーニング初心者のうちは自重トレーニングでも十分に筋肥大に有効です。また、動作速度をゆっくりと行うスロートレーニングを導入することで、一定レベルまでは筋肥大の成果が期待できます。
ただし、一定以上の筋力のついてくるトレーニング中級者以降は、あまり筋肥大は期待できませんのでより高負荷のフリーウエイトトレーニングを行う必要があります。
厚生労働省によるスロートレーニングの筋肥大効果に関する記載
スロートレーニングとは、筋肉の発揮張力を維持しながらゆっくりと動作するレジスタンス運動のひとつの方法です。比較的軽めの負荷であっても、ゆっくりと動作することで大きな筋肥大・筋力増強効果を得ることができます。関節や筋肉にかかる負荷が小さいことから、安全に行える効果的なレジスタンス運動として期待されています。
引用:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-04-003.html
厚生労働省による筋繊維に関する記載
骨格筋を構成している筋繊維には大きく分けて速筋と遅筋の2種類があります。速筋は白っぽいため白筋とも呼ばれます。収縮スピードが速く、瞬間的に大きな力を出すことができますが、長時間収縮を維持することができず張力が低下してしまいます。遅筋は赤みがかった色から赤筋とも呼ばれます。収縮のスピードは比較的遅く、大きな力を出すことはできませんが、疲れにくく長時間にわたって一定の張力を維持することができます。
引用:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-026.html
具体的な三角筋の自重トレーニングのやり方
パイクプッシュアップ(三角筋低強度)
パイクプッシュアップは、大きく腰を曲げて構えることにより、体幹に対して上方に腕を押し出す軌道で行う腕立て伏せのバリエーションです。
この軌道により、通常の腕立て伏せに比べて三角筋に対して負荷を集中させることが可能になります。
なお、肩関節に負担をかけないために、肘を体幹後ろ側に突出させないように留意して行ってください。
三角筋の部位別に負荷を加えたい場合は、以下のように動作を調整します。
三角筋前部:手幅を狭くして行う
三角筋中部:手幅を広くして行う
三角筋後部:身体を下ろす時にゆっくりと負荷に耐えながら動作を行い、ネガティブ負荷をかける
逆立ち腕立て伏せ(三角筋高強度)
逆立ち腕立て伏せ(ハンドスタンドプッシュアップ)は、全体重をかけられるため高強度で三角筋を鍛えられる自重トレーニング種目です。
トレーニングとして行う場合は、完全に自立倒立する必要はなく、壁にもたれて行います。
なお、肩関節に負担をかけないために、肘を体幹後ろ側に突出させないように十分に注意して行ってください。
三角筋の部位別に負荷を加えたい場合は、以下のように動作を調整します。
三角筋前部:手幅を狭くして行う
三角筋中部:手幅を広くして行う
三角筋後部:身体を下ろす時にゆっくりと負荷に耐えながら動作を行い、ネガティブ負荷をかける
自重トレーニングの補助器具
プッシュアップバーの種類と特徴
プッシュアップバーには、傾斜タイプ・スライドタイプ・回転タイプなど多くの種類があり、トレーニング目的に応じて適切なタイプを選択することが大切です。
懸垂器具の種類と特徴
懸垂器具には、フックタイプ・ストレートバータイプなど簡易設置型のほか、ラックタイプなど多くの種類があり、トレーニング目的に応じて適切なタイプを選択することが大切です。
腹筋ローラーの種類と特徴
自宅で気軽に取り組め、なおかつ有効性が高いのが腹筋ローラを使用したトレーニングです。腹筋ローラーには、単輪タイプ・二輪タイプ・幅広タイプなど多くの種類があり、トレーニング目的に応じて適切なタイプを選択することが大切です。
筋力トレーニングと食事の基礎知識
筋力トレーニングを実施したら、そこで満足して終わるのではなく、トレーニング効果を最大限高める食事・栄養摂取をする必要があります。
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