筋力トレーニングの適正頻度について、超回復理論と筋肉部位ごとの回復期間に基づいて解説します。
初心者にありがちなケースが、早くトレーニングの成果を出したいと焦ってしまい「筋トレを毎日実施する」というものですが、これは全くの逆効果になります。
効率的に筋力トレーニングの成果を上げていくためには、まずは基礎となる筋繊維の超回復理論を理解する必要があります。
超回復理論と筋肉部位ごとの回復期間
筋力トレーニングを行い筋繊維に負荷をかけると、筋繊維はわずかな裂傷を負い、一定の回復期間の後にトレーニング前よりも強く・太くなって回復します。この生体反応を「超回復」と呼び、筋力トレーニングとは、計画的に超回復を繰り返すことにより筋肉を強くしていく行為です。
このため、筋肉に対してレジスタンス負荷をかける頻度・間隔には十分に留意してトレーニングプログラムを組み立てる必要があります。
骨格筋の超回復期間には、それぞれ固有の回復時間があり、それは年齢や性別によって左右されますが、20~30代男性の場合、おおよそ以下のようになります。
筋肉部位ごとの超回復期間
・大胸筋:48時間
・三角筋:48時間
・上腕三頭筋:48時間
・僧帽筋:48時間
・広背筋:72時間
・上腕二頭筋:48時間
・腹筋群:24時間
・脊柱起立筋:72時間
・大臀筋:48時間
・大腿四頭筋:72時間
・ハムストリングス:72時間
・前腕筋群:24時間
・下腿三頭筋:24時間
なお、加齢とともに超回復期間は最大2倍程度まで長くなります。また、女性は男性に比べると筋肉合成に関わるホルモン分泌量が少ないため、男性よりも超回復期間が長くなる傾向にあります。
▼詳細記事
筋トレの超回復って嘘?筋肉部位ごとの回復期間とエビデンスを明示
超回復前に筋力トレーニングを実施すると
筋力トレーニングによって筋繊維が破壊され、超回復がなされないままトレーニングを実施すると、筋繊維はさらに壊され、これを慢性的に繰り返していくと筋肉は発達するどころか縮小傾向に陥ってしまいます。
超回復が完了したか否かのおおよその目安は「筋肉痛が残っているかどうか」で判断できますので、筋肉痛が残る部位には負荷をかけないようにすることが必要です。
このような、超回復理論にのっとり、なおかつ効率的に全身をトレーニングしていくためには、全身の筋肉を連動性によっていくつかのグループに分け、ローテーションで鍛えていく「部位分割法|スプリットトレーニング」が最適です。
部位分割トレーニング
筋力トレーニングの効率を上げるためには、一度に全身の筋肉全てを鍛えるのではなく、筋肉部位を2~4グループに分け、1日に1グループずつ一週間で2~4回の分割トレーニングを行うことが有効です。
週2回のトレーニングの場合
①上半身・下半身の押す動作の筋肉
②上半身・下半身の引く動作の筋肉
具体的なトレーニングメニューは下記の記事に記載しています。
▼具体的な週2回トレーニングメニュー
週3回のトレーニングの場合
①上半身の押す動作の筋肉
②下半身の筋肉
③上半身の引く動作の筋肉
具体的なトレーニングメニューは下記の記事に記載しています。
▼具体的な週3回トレーニングメニュー
週4回のトレーニングの場合
①上半身の押す動作の筋肉
②下半身の押す動作の筋肉
③上半身の引く動作の筋肉
④下半身の引く動作の筋肉
具体的なトレーニングメニューは下記の記事に記載しています。
▼具体的な週4回トレーニングメニュー
厚生労働省による超回復とトレーニング頻度に関する記載
筋肉には疲労からの回復の時間が必要です。レジスタンス運動は標的の筋肉に負荷を集中する運動ですから、その筋肉に十分な回復期間としてトレーニング間隔をあける必要があります。毎日行うのではなく、2-3日に一回程度、週あたり2-3回行うくらいの運動頻度が推奨されます。
引用:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-058.html
筋肉はレジスタンス運動を行うと筋線維の一部が破断されます。それが修復される際にもとの筋線維よりも少し太い状態になります。これを「超回復」と呼び、これを繰り返すと筋の断面積が全体として太くなり筋力が上がります。筋力のトレーニングはこの仕組みを利用して最大筋力に近い負荷でレジスタンス運動し、筋が修復されるまで2~3日の休息ののち、またレジスタンス運動でトレーニングということの繰り返しによって行われます。
引用:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-092.html
続いて、総合的な筋力トレーニングの部位分割プログラムメニューについて、以下に記載していきます。
理想的なトレーニング頻度
まずは週2回からはじめ週3回を基本にする
理想的な筋力トレーニング頻度は一概には決められませんが、トレーニングに関する熟練度、特に筋肉を回復させるための食事習慣や生活ルーティンができているかによって大きく変わってきます。
筋肉を回復させるための知識や習慣が身につくまでの初心者期間は、週二回の低頻度で筋力トレーニングを行っていき、その後、もっともバランスのよいとされる週三回のトレーニング頻度で継続していくのが一般的です。
また、競技に取り組むなど高度な知識と技術を身につければ、週四回の高頻度での筋力トレーニングも可能ですが、あくまでもこれは上級者レベルの取り組みと言えるでしょう。
次の項目からは、具体的な週2回、3回、4回のトレーニングプログラム例(各トレーニング種目の組み方)を示していきます。
具体的な週2回の部位分割トレーニング例(自宅)
①週1回目のトレーニングメニュー
①下半身全体のメニュー:自重スクワットまたはチューブスクワット(チューブレッグプレス)またはダンベルスクワットを2~3セット
②下半身前側のメニュー:シシースクワットまたはチューブレッグエクステンションまたはダンベルレッグエクステンションを1~2セット
③下半身後側のメニュー:ブルガリアンスクワット(フロントランジ)またはチューブレッグカールまたはダンベルレッグカールを1~2セット
④上半身押す筋肉のメニュー:腕立て伏せ(膝つき腕立て伏せ)またはチューブチェストプレスまたはダンベルプレスを2~3セット
⑤大胸筋のメニュー:チューブチェストフライ(チューブプルオーバー)またはダンベルフライ(ダンベルプルオーバー)を1~2セット
⑥腹筋・腸腰筋のメニュー:レッグレイズ(リバースクランチ)またはチューブレッグレイズまたはダンベルレッグレイズを2~3セット
②週二回目のトレーニングメニュー
①背筋全体のメニュー:懸垂(斜め懸垂)またはチューブデッドリフトまたはダンベルデッドリフトを2~3セット
②広背筋のメニュー:チューブラットプル(チューブローイング)またはダンベルローイングを2~3セット
③僧帽筋のメニュー:チューブショルダーシュラッグ(チューブリバースフライ)またはダンベルショルダーシュラッグを2~3セット
④上腕二頭筋のメニュー:逆手懸垂またはチューブカール(チューブハンマーカール)またはダンベルカールを2~3セット
⑤脊柱起立筋のメニュー:バックエクステンションまたはチューブグッドモーニングを2~3セット
具体的な週2回の部位分割トレーニング例(ジム)
①週1回目のトレーニングメニュー
①下半身全体のメニュー:マシンレッグプレス(スミスマシンスクワット)またはバーベルスクワットを2~3セット
②下半身前側のメニュー:マシンレッグエクステンションまたはバーベルフロントスクワットを1~2セット
③下半身後側のメニュー:マシンレッグカールまたはバーベルブルガリアンスクワット(バーベルフロントランジ・バーベルスティッフレッグドデッドリフト)を1~2セット
④上半身押す筋肉のメニュー:マシンチェストプレス(スミスマシンベンチプレス)またはバーベルベンチプレス(バーベルインクラインベンチプレス・バーベルデクラインベンチプレス)を2~3セット
⑤大胸筋のメニュー:マシンチェストフライ(ケーブルフライ)を1~2セット
⑥腹筋・腸腰筋のメニュー:ケーブルクランチを2~3セット
②週二回目のトレーニングメニュー
①背筋全体のメニュー:Tバーローイング(スミスマシンデッドリフト)またはバーベルデッドリフトを2~3セット
②広背筋のメニュー:ケーブルラットプルダウン(ケーブルローイング)またはバーベルベントオーバーロウを2~3セット
③僧帽筋のメニュー:ケーブルショルダーシュラッグまたはバーベルショルダーシュラッグを2~3セット
④上腕二頭筋のメニュー:マシンカール(ケーブルカール)またはバーベルカールを2~3セット
⑤脊柱起立筋のメニュー:スミスマシングッドモーニングまたはバーベルグッドモーニングを2~3セット
具体的な週3回の部位分割トレーニング例(自宅)
①週1回目のトレーニング(上半身の押す作用の筋肉+体幹の前側の筋肉)
①押す筋肉全体のメニュー:腕立て伏せ(膝つき腕立て伏せ)またはチューブチェストプレスまたはダンベルプレスを2~3セット
②大胸筋のメニュー:チューブチェストフライ(チューブプルオーバー)またはダンベルフライ(ダンベルプルオーバー)を2~3セット
③三角筋のメニュー:パイクプッシュアップまたはチューブショルダープレス(チューブアップライトロー)またはダンベルショルダープレス(ダンベルアップライトロー)を2~3セット
④上腕三頭筋のメニュー:ナロープッシュアップ(ベンチディップス)またはチューブフレンチプレス(チューブプレスダウン)またはダンベルフレンチプレス(ダンベルキックバック)を2~3セット
⑤腹筋群のメニュー:クランチ(クランチツイスト)またはチューブクランチまたはダンベルクランチ(ダンベルサイドベント)を1~2セット
⑥腸腰筋群のメニュー:レッグレイズまたはチューブレッグレイズまたはダンベルレッグレイズを1~2セット
②週2回目のトレーニング(下半身の筋肉)
①下半身全体のメニュー:自重スクワットまたはチューブスクワット(チューブレッグプレス)またはダンベルスクワットを2~3セット
②大腿四頭筋のメニュー:シシースクワットまたはチューブレッグエクステンションまたはダンベルレッグエクステンションを2~3セット
③ハムストリングスのメニュー:ブルガリアンスクワット(フロントランジ)またはチューブレッグカール(チューブスティッフレッグドデッドリフト)またはダンベルフロントランジ(ダンベルレッグカール)を2~3セット
④内転筋群のメニュー:ワイドスクワット(サイドランジ)またはチューブワイドスクワット(チューブアダクション)またはダンベルワイドスクワット(ダンベルサイドランジ)を2~3セット
③週3回目のトレーニング(上半身の引く作用の筋肉+体幹の後側の筋肉)
①引く筋肉全体のメニュー:懸垂(斜め懸垂)またはチューブデッドリフトまたはダンベルデッドリフトを2~3セット
②広背筋のメニュー:チューブラットプル(チューブローイング)またはダンベルローイングを2~3セット
③僧帽筋のメニュー:パラレル懸垂またはチューブショルダーシュラッグ(チューブリバースフライ)またはダンベルショルダーシュラッグを2~3セット
④上腕二頭筋のメニュー:逆手懸垂またはチューブカール(チューブハンマーカール)またはダンベルカールを2~3セット
⑤脊柱起立筋のメニュー:バックエクステンション(ヒップレイズ)またはチューブグッドモーニングを2~3セット
具体的な週3回の部位分割トレーニング例(ジム)
①週1回目のトレーニング(上半身の押す作用の筋肉+体幹の前側の筋肉)
①押す筋肉全体のメニュー:マシンチェストプレス(スミスマシンベンチプレス)またはバーベルベンチプレスを2~3セット
②大胸筋のメニュー:マシンチェストフライ(ケーブルフライ)またはバーベルインクラインベンチプレス(バーベルデクラインベンチプレス)を2~3セット
③三角筋のメニュー:マシンショルダープレス(ケーブルアップライトロー)またはバーベルショルダープレス(バーベルアップライトロー)を2~3セット
④上腕三頭筋のメニュー:マシンディップス(ケーブルプレスダウン)またはバーベルナローベンチプレス(バーベルフレンチプレス)を2~3セット
⑤腹筋群・腸腰筋群のメニュー:ケーブルクランチを2~3セット
②週2回目のトレーニング(下半身の筋肉)
①下半身全体のメニュー:マシンレッグプレス(スミスマシンスクワット)またはバーベルスクワットを2~3セット
②大腿四頭筋のメニュー:ハックスクワット(マシンレッグエクステンション)またはバーベルフロントスクワットを2~3セット
③ハムストリングスのメニュー:マシンレッグカールまたはバーベルフロントランジ(バーベルスティッフレッグドデッドリフト)を2~3セット
④内転筋群のメニュー:マシンアダクション(ケーブルアダクション)またはバーベルサイドランジを2~3セット
③週3回目のトレーニング(上半身の引く作用の筋肉+体幹の後側の筋肉)
①引く筋肉全体のメニュー:Tバーローイング(スミスマシンデッドリフト)またはバーベルデッドリフトを2~3セット
②広背筋のメニュー:ケーブルラットプルダウン(ケーブルローイング)またはバーベルベントオーバーロウを2~3セット
③僧帽筋のメニュー:ケーブルショルダーシュラッグまたはバーベルショルダーシュラッグを2~3セット
④上腕二頭筋のメニュー:マシンカール(ケーブルカール)またはバーベルカール(バーベルEZバーカール)を2~3セット
⑤脊柱起立筋のメニュー:スミスマシングッドモーニングまたはバーベルグッドモーニングを2~3セット