ダイエット目的で筋力トレーニングを実施する女性にとって気になるファクターが体重ですが、女性のダイエットトレーニングの場合は「体重が増加することもある」ことを認識し、体重だけを指標としない取り組みが大切です。その基本的な理論を解説します。
あわせて、近年男性の多くが志向する体型、つまり過度に筋肥大しない「細マッチョ体型」の指標となる標準的なBMI数値・体重・体脂肪率についても解説します。
厚生労働省による記載
体脂肪率と健康障害には明確な相関が認められませんが、これは体脂肪率が内臓脂肪だけでなく皮下脂肪を含む体脂肪の量を反映しているためです。すなわち内臓脂肪の蓄積にほぼ比例する腹囲が基準値を超えれば生活習慣病のリスクが高まりますが、体脂肪率が高くてもそのリスクが高いとはいえないのです。こうした理由からメタボリックシンドロームの診断基準にも体脂肪率は採用されていません。
ただし体重とともに体脂肪率が表示される体重計も増えていますので、一日のうち一定の時間帯に測定するのであれば、減量モチベーションを高める目安として用いてもよいでしょう。
引用:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-041.html
ダイエットトレーニングは体重が増える
ダイエットと言えば、どうしても気にしてしまうのが体重ですが、これは筋力トレーニングによるダイエットとは相反する場合があります。
筋力トレーニングによってダイエットを行う場合の基本的な考え方・理論は、筋密度を向上させることにより基礎代謝の高い「太りにくく痩せやすい体質」を作ることであり、この過程では筋密度向上による体重増加もありえます。
つまり、上図のように体脂肪が多く筋密度が低い「肥満体型」よりも体脂肪が少なく筋密度が高い「痩せ体型」のほうが体重としては多くなってしまう場合もあります。これは、単位体積あたりの筋肉と脂肪の重量差に起因しています。
このようなケースの多くは、BMI数値が標準範囲内の「運動経験の少ないややふくよかな女性」で見られます。
厚生労働省によるダイエットに関する記載
一般的なダイエットは、身体活動などで消費するエネルギーよりも、食事で摂取するエネルギーを少なくすることで体重を減らします。一日の基礎代謝量は、成人男性約1,500キロカロリー、成人女性で約1,150キロカロリーです。
極端に摂取量を制限したり特定の食品のみを摂取する偏ったダイエットは、一時的には体重の減量が期待できますが、ストレスがたまるうえに必須栄養素の摂取量が不足し
(中略)
規則正しい生活を送り、食事ではエネルギー量(カロリー)を計算して、決して無理な状態とならないように調整しつつ、適度な運動を長く続けることが、ダイエットを成功させる秘訣です。
引用:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-090.html
厚生労働省によるダイエット運動に関わる記載
フィットネスとは元来は体力という意味ですが、近年は健康の維持・増進を目指して体組成(体脂肪率)の正常化・心肺機能の向上・筋力強化・筋持久力や柔軟性の向上などを行う運動のことを表すようになりました。
主な運動として、ジョギング・水泳・エアロビクスダンス・ウォーキング・サイクリング・筋肉トレーニング・ヨガ・ティラピス・ストレッチングなどがあります。
引用:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-078.html
筋肉は脂肪の三倍の重さがある
筋肉はとても重く、同じ体積で比較した場合脂肪の三倍もの重量があります。これが、「見た目が細いのに体重がある状態」の理由です。
体重を指標としないダイエットを
「体脂肪が多めで筋密度が低く体重が軽い」状態と「体脂肪が少なめで筋密度が高く体重が重い」状態とでは、どちらが外見的に細く見えるでしょうか?
それは、後者です。筋密度が高く体脂肪が少ない状態では、外見的に引き締まりしなやかに見えます。アスリートの女性や筋力トレーニングを行って体型作りをしているモデルなどがこの状態です。
そして、なによりも、筋密度が高く体脂肪が少ない体型のほうが健康的であり、加齢に対しても日常での運動能力の低下が緩やかであるため推奨されています。また、基礎代謝も向上するため太りにくい体質にシフトしていくことも可能です。
このように、女性のダイエットは体重を指標にするのではなく、あくまでも体脂肪率を優先するとともに、筋力トレーニングによって筋密度・基礎代謝を上昇させることが大切です。
厚生労働省による基礎代謝に関する記載
基礎代謝量は通常10代をピークに加齢とともに低下します。また体の組成すなわち筋肉と脂肪の比率も基礎代謝量に大きく影響します。基礎代謝量を臓器別に見ると、筋肉・肝臓・脳がほぼ2割ずつを消費しており、筋肉の少ない人は基礎代謝量が低くなります。一般に男性に比べ女性の基礎代謝量が低いのはこのためです。
引用:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-019.html
体脂肪率とは
体脂肪率(たいしぼうりつ、英: body fat percentage; BFP)とは、動物の体内に含まれる脂肪の重量の割合のこと。
肥満は「体脂肪が必要以上に増えた状態」を指すが、体脂肪率の測定には困難が伴い、そのためBMIなど簡易的な診断法が広く一般に使われていた。ところが、近年体脂肪計(体組成計)が一般にも普及し始め、体脂肪率によって肥満の判定を行う場合も増えるようになってきている。
具体的な一週間のダイエットトレーニング
筋密度を向上させ、基礎代謝の高い身体つくりのための具体的な一週間のトレーニングプログラム(自宅・ジムそれぞれの実施例)に関しては、下記の記事をご参照ください。
▼女性のダイエットトレーニング
女性のためのダイエット筋トレメニュー例|一週間3回の自宅・ジム別プログラム例
細マッチョの標準的な体重
近年、メディアなどでも良く表現される「細マッチョ」体型が、筋力トレーニングを実施する男性の目標体型であるケースが増えてきています。
「細マッチョ」というものに厳密な定義はありませんが、過度に筋肥大せず、体脂肪率が低めで腹筋が浮いて見える状態が一般的な概念です。
これを数値化するとすれば、「体脂肪率15%前後」「BMI指数が標準範囲内」であると推測されます。
体脂肪率とBMI指数
体脂肪率とは、全体重における脂肪の比率を示す値で、体脂肪計機能のついた体重計などで簡単に測定することができます。
BMI指数とはBody Mass Indexの略語で、身長と体重の関係を数値化した肥満指数のことです。その計算式は以下のようになります。
BMI=体重(kg)÷[身長(m)×身長(m)]
一例をあげると、体重60kg身長170cmの男性の場合、BMI値は60÷(1.7×1.7)=20.98です。また、標準体重の範囲とされるBMI値は18.5~25とされています。
また、BMI指数の標準体重の中央値であるとされる「22.0」の標準体重を求める数式は以下の通りです。
標準体重=22×身長(m)×身長(m)
身長別の細マッチョ体型標準体重
これらのことから、細マッチョの標準体重はその体脂肪率が15%であることを前提に次のようになります。
身長165cmの細マッチョ標準体重=59.9kg
身長166cmの細マッチョ標準体重=60.6kg
身長167cmの細マッチョ標準体重=61.4kg
身長168cmの細マッチョ標準体重=62.1kg
身長169cmの細マッチョ標準体重=62.8kg
身長170cmの細マッチョ標準体重=63.6kg
身長171cmの細マッチョ標準体重=64.3kg
身長172cmの細マッチョ標準体重=65.1kg
身長173cmの細マッチョ標準体重=65.8kg
身長174cmの細マッチョ標準体重=66.6kg
身長175cmの細マッチョ標準体重=67.4kg
身長176cmの細マッチョ標準体重=68.1kg
身長177cmの細マッチョ標準体重=68.9kg
身長178cmの細マッチョ標準体重=69.7kg
身長179cmの細マッチョ標準体重=70.5kg
身長180cmの細マッチョ標準体重=71.3kg
身長181cmの細マッチョ標準体重=72.1kg
身長182cmの細マッチョ標準体重=72.9kg
身長183cmの細マッチョ標準体重=73.7kg
身長184cmの細マッチョ標準体重=74.5kg
身長185cmの細マッチョ標準体重=75.3kg
トレーニング目的別の負荷回数設定
筋力トレーニングの対象となる骨格筋は、筋繊維が束状になって構成されていますが、その筋繊維には大きく「遅筋」と「速筋」があり、速筋は「速筋繊維Ⅱa」と「速筋繊維Ⅱb」に分けられます。それぞれの特性と筋力トレーニングでの負荷設定は以下の通りです。
遅筋(遅筋繊維Ⅰ)
持久的な運動において持続的な遅い収縮(Slow)をし、酸素(Oxygen)を消費することからSO筋とも別称されます。レジスタンストレーニングで鍛えてもほとんど筋肥大しません。陸上競技で例えるなら、長距離走に必要な筋肉です。
筋力トレーニングでは20レップス以上の反復回数で挙上限界がくるような、低負荷設定で鍛えます。
速筋(速筋繊維Ⅱa)
持久要素のある瞬発的な動作において速い収縮(Fast)をし、酸素(Oxygen)を消費することからFO筋とも別称されます。レジスタンストレーニングで鍛えると筋肥大します。陸上競技で例えるなら、400~800m走に必要な筋肉です。
筋力トレーニングでは12~15レップスの反復回数で挙上限界がくるような、中負荷設定で鍛えます。
速筋(速筋繊維Ⅱb)
瞬発的な運動において爆発的な速い収縮(Fast)をし、グリコーゲン(Glycogen)を消費することからFG筋とも別称されます。レジスタンストレーニングで鍛えると強く筋肥大します。陸上競技で例えるなら、100~200m走に必要な筋肉です。
筋力トレーニングでは6~10レップスの反復回数で挙上限界がくるような、高負荷設定で鍛えます。
厚生労働省による筋繊維に関する記載
骨格筋を構成している筋繊維には大きく分けて速筋と遅筋の2種類があります。速筋は白っぽいため白筋とも呼ばれます。収縮スピードが速く、瞬間的に大きな力を出すことができますが、長時間収縮を維持することができず張力が低下してしまいます。遅筋は赤みがかった色から赤筋とも呼ばれます。収縮のスピードは比較的遅く、大きな力を出すことはできませんが、疲れにくく長時間にわたって一定の張力を維持することができます。
引用:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-026.html
ダイエットは20回以上・細マッチョは12~15回で実施
以上のことから、ダイエットトレーニングでは20レップス以上の反復回数で挙上限界がくるような、低負荷設定で鍛えます。
また、細マッチョトレーニングでは、12~15レップスの反復回数で挙上限界がくるような、中負荷設定で鍛えていくのが一般的です。
細マッチョトレーニング情報
男性の細マッチョトレーニングについては下記の記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。
▼詳細記事
細マッチョになる筋トレメニュー|自宅~ジムでの具体的なプログラム例