筋肥大(バルクアップ)のためのトレーニングは、男性には根強い人気があり、いわゆる「ゴリマッチョ体型」を目指して筋力トレーニングに励む方は少なくありません。
筋肥大のために効率的なトレーニング頻度および負荷回数設定について解説します。あわせて、具体的な一週間のトレーニングメニューも例示します。
筋肥大トレーニングに関する学術研究
筋力増強訓練は,競技者のトレーニングには不可欠であり,理学療法プログラムでも最も多く用いられているものであろう。それ故,理学療法士は効果的な方法を日々考えているに違いない。その一助になればと,以下の項目を総説的に述べた。
1)筋組成2)筋組織の変化3)筋力向上の要因
4)トレーニングの原理5)筋力トレーニングの効果
6)子どもの筋力トレーニング7)高齢者の筋力トレーニング
筋肥大トレーニングの対象となる筋繊維
筋力トレーニングの対象となる骨格筋は、筋繊維が束状になって構成されていますが、その筋繊維には大きく「遅筋」と「速筋」があり、速筋は「速筋繊維Ⅱa」と「速筋繊維Ⅱb」に分けられます。それぞれの特性と筋力トレーニングでの負荷設定は以下の通りです。
遅筋(遅筋繊維Ⅰ)
持久的な運動において持続的な遅い収縮(Slow)をし、酸素(Oxygen)を消費することからSO筋とも別称されます。レジスタンストレーニングで鍛えてもほとんど筋肥大しません。陸上競技で例えるなら、長距離走に必要な筋肉です。
筋力トレーニングでは20レップス以上の反復回数で挙上限界がくるような、低負荷設定で鍛えます。
速筋(速筋繊維Ⅱa)
持久要素のある瞬発的な動作において速い収縮(Fast)をし、酸素(Oxygen)を消費することからFO筋とも別称されます。レジスタンストレーニングで鍛えると筋肥大します。陸上競技で例えるなら、400~800m走に必要な筋肉です。
筋力トレーニングでは12~15レップスの反復回数で挙上限界がくるような、中負荷設定で鍛えます。
速筋(速筋繊維Ⅱb)
瞬発的な運動において爆発的な速い収縮(Fast)をし、グリコーゲン(Glycogen)を消費することからFG筋とも別称されます。レジスタンストレーニングで鍛えると強く筋肥大します。陸上競技で例えるなら、100~200m走に必要な筋肉です。
筋力トレーニングでは6~10レップスの反復回数で挙上限界がくるような、高負荷設定で鍛えます。
筋肥大のためには速筋(速筋繊維Ⅱb)を鍛える
以上のことから、筋肥大のためには速筋(速筋繊維Ⅱb)を鍛える、つまり、6~10レップスの反復回数で挙上限界がくるような高負荷設定で鍛えることが必要です。
厚生労働省による筋繊維に関する記載
骨格筋を構成している筋繊維には大きく分けて速筋と遅筋の2種類があります。速筋は白っぽいため白筋とも呼ばれます。収縮スピードが速く、瞬間的に大きな力を出すことができますが、長時間収縮を維持することができず張力が低下してしまいます。遅筋は赤みがかった色から赤筋とも呼ばれます。収縮のスピードは比較的遅く、大きな力を出すことはできませんが、疲れにくく長時間にわたって一定の張力を維持することができます。
引用:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-026.html
筋肥大のための適正トレーニング頻度
筋力トレーニングを行い筋繊維に負荷をかけると、筋繊維はわずかな裂傷を負い、一定の回復期間の後にトレーニング前よりも強く・太くなって回復します。この生体反応を「超回復」と呼び、筋力トレーニングとは、計画的に超回復を繰り返すことにより筋肉を強くしていく行為です。
このため、筋肉に対してレジスタンス負荷をかける頻度・間隔には十分に留意してトレーニングプログラムを組み立てる必要があります。
骨格筋の超回復期間には、それぞれ固有の回復時間があり、それは年齢や性別によって左右されますが、20~30代男性の場合、おおよそ以下のようになります。
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筋肉部位ごとの超回復期間
・大胸筋:48時間
・三角筋:48時間
・上腕三頭筋:48時間
・僧帽筋:48時間
・広背筋:72時間
・上腕二頭筋:48時間
・腹筋群:24時間
・脊柱起立筋:72時間
・大臀筋:48時間
・大腿四頭筋:72時間
・ハムストリングス:72時間
・前腕筋群:24時間
・下腿三頭筋:24時間
このような、超回復理論にのっとり効率的に全身をトレーニングしていくためには、全身の筋肉を連動性によっていくつかのグループに分け、ローテーションで鍛えていく「部位分割法|スプリットトレーニング」が最適です。
週3回を上限に実施する
以上のことから、筋肥大トレーニングのためには週3回のスプリットトレーニングが最適であることがわかりますが、特に筋肥大を狙う場合は筋肉に負荷を与えることと同等以上に「筋肉を超回復させる」ことが重要になります。
また、筋肥大トレーニングでの高負荷は筋肉だけでなく、靭帯や関節にも高い負荷がかかりますので、十二分な休息が大切です。
筋力トレーニングの実施頻度を上げてしまうと、超回復が追いつかないオーバーワークになりますので十分に注意してください。
トレーニング対象となる主な骨格筋の名称と作用
筋力トレーニングの対象となる主な骨格筋は、その連動性と共働関係から以下のようにグループ分けされるのが一般的です。それぞれの筋肉名称と主な作用は以下のようになります。
1.上半身前面(押す動作)のグループ
大胸筋:上腕を前方に押し出し閉じる
三角筋:上腕を上・前・横・後ろに上げる
上腕三頭筋:肘関節を伸展させる
前腕伸筋群:手首関節を伸展させる
腹筋群:体幹を屈曲・回旋させる
このほかに、小胸筋・前鋸筋・肘筋などの深層筋も含まれます。
2.上半身後面(引く動作)のグループ
僧帽筋:肩甲骨を引き寄せる
広背筋:上腕を上・前から引き寄せる
上腕二頭筋:肘関節を屈曲させる
前腕屈筋群:手首関節を屈曲させる
脊柱起立筋:体幹を伸展させる
このほかに、菱形筋・大円筋・回旋筋腱板。上腕筋などの深層筋も含まれます。
3.下半身前面(押す動作)のグループ
腸腰筋群:股関節を屈曲させる
大腿四頭筋:肘関節を伸展させる
下腿三頭筋:足首関節を伸展させる
4.下半身後面(引く動作)のグループ
臀筋群:股関節を伸展させる
ハムストリングス:膝関節を屈曲させる
内転筋群:大腿を内転させる
筋肉の名称と作用の図鑑
筋肥大トレーニングの具体的な筋肉グループ分け
筋肥大トレーニングは十二分な超回復期間を考慮して、週3回の部位分割トレーニングが適切であることは先に述べましたが、具体的な筋肉のグループ分けと一週間の実施例は次の通りです。
①上半身の押す筋肉のグループ
②下半身の筋肉のグループ
③上半身の筋肉のグループ
※トレーニングする総筋肉量の少ない①の日に腹筋群のトレーニングも合わせて実施する
筋肥大トレーニングの種目実施方法
筋肥大トレーニングの種目実施において重要なのは、筋肉に可能かつ安全な範囲で高負荷をかけることです。
このためには、複数の関節と筋肉を同時に動かす複合関節運動=コンパウンド種目を中心に種目を実施していきます。
また、1セットずつオールアウト(筋肉を完全に追い込む)ことが重要ですので、コンパウンド種目を主体に低セットでプログラムを組んでいきます。これが、いわゆる「ヘビーデューティートレーニング」の考え方です。
具体的な筋肥大トレーニングプログラム例
週1回目のトレーニング(上半身の押す筋肉+腹筋)
自宅プログラム
①ディップスを1~2セット
②ダンベルプレスを2~3セット
③パイクプッシュアップを1~2セット
④ダンベルショルダープレスを2~3セット
⑤ナロープッシュアップを1~2セット
⑥ダンベルフレンチプレスを2~3セット
※全てのセットを限界まで行ないます。
ジムプログラム
①スミスマシンベンチプレスまたはマシンチェストプレスまたはバーベルベンチプレスを3~4セット
②スミスマシンショルダープレスまたはマシンショルダープレスまたはバーベルショルダープレスを3~4セット
③スミスマシンナロープレスまたはバーベルナローベンチプレスを3~4セット
④ケーブルクランチを3~4セット
※全てのセットを限界まで行ないます。
週2回目のトレーニング(下半身の筋肉)
自宅プログラム
①ブルガリアンスクワットを2~3セット
②ダンベルスクワットを3~4セット
※全てのセットを限界まで行ないます。
ジムプログラム
①スミスマシンスクワットまたはマシンレッグプレスまたはバーベルスクワットを5~6セット
※全てのセットを限界まで行ないます。
週3回目のトレーニング(上半身の引く筋肉)
自宅プログラム
①懸垂を2~3セット
②ダンベルデッドリフトまたはダンベルローイングを2~3セット
③ダンベルカールを2~3セット
※全てのセットを限界まで行ないます。
ジムプログラム
①スミスマシンデッドリフトまたはTバーローイングまたはバーベルデッドリフトを2~3セット
②ケーブルローイングを1~2セット
③ケーブルラットプルダウンを1~2セット
④ケーブルカールまたはマシンカールまたはバーベルカールを2~3セット
※全てのセットを限界まで行ないます。
筋力トレーニングと食事の基礎知識
筋力トレーニングを実施したら、そこで満足して終わるのではなく、トレーニング効果を最大限高める食事・栄養摂取をする必要があります。
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