腰痛の改善に有効であるとされている背筋群・腹筋群のトレーニング方法を解説するとともに、腰痛時にも実施可能な腰に負担の少ない種目をご紹介します。
腰痛とは
腰痛の原因はさまざまであり、トレーニングによって改善が期待できる「筋力低下に起因するもの」のほか、腰椎の変形や内臓疾患に起因するものまであります。このため、腰痛になった場合は自分で判断せず、まずは専門医を受診する必要があります。
その上で、筋力低下・不足に起因すると判断された場合にのみ、筋力トレーニングを実施していきます。
日本整形外科学界による記載
原因と病態
腰(脊柱)に由来するもの
先天異常や側弯症、腰椎分離症など主に成長に伴っておこるもの、変形性脊椎症、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、変性すべり症など主に加齢により生ずるもの、腰椎骨折や脱臼などの外傷、カリエスや化膿性脊椎炎などの感染や炎症によるもの、転移癌などの腫瘍によるものなどがあります。
腰以外に由来するもの
解離性大動脈瘤などの血管の病気、尿管結石などの泌尿器の病気、子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科の病気、胆嚢炎や十二指腸潰瘍などの消化器の病気、変形性股関節症などの腰以外の整形外科の病気によるものがあります。加えて身体表現性障害、統合失調などの精神疾患や精神的なストレスによる心理的な原因による場合もあります。
引用:日本整形外科学会「腰痛」
Wikipediaによる記載
腰痛(ようつう, Low back pain)とは、腰に痛み、炎症などを感じる状態を指す一般的な語句。 その期間によって、急性(6週間まで)、亜急性(6-12週間)、慢性(12週間以上)に分類される。
大部分の腰痛はたいてい発症から数週間以内には改善され、40-90%のケースでは6週間後までに完全に改善される。しかし急性患者の3分の1は一年後には慢性化し、5分の1は活動に重大な支障をきたす重度になる。
腰痛改善のために鍛える部位
脊柱起立筋を中心とした長背筋群
腰痛改善のために鍛える対象となるのが脊柱起立筋を含む長背筋群です。
長背筋群は脊柱沿いに位置する筋肉群で、脊柱起立筋(最長筋・棘筋・腸肋筋)・多裂筋・回旋筋などから構成され、体幹の伸展・回旋および姿勢維持の作用があります。
脊柱起立筋の共働筋と拮抗筋
脊柱起立筋には連動して動作する共働筋と、バランスをとるように反対の方向に収縮する拮抗筋とがあり、それらもあわせてトレーニングしていくことが大切です。
脊柱起立筋の作用のなかでも主たるものが体幹伸展(身体を伸ばす動き)ですが、その動きと連動するのが身体の後面の筋肉である広背筋・僧帽筋・臀筋群・ハムストリングスなどです。
また、拮抗筋は体幹屈曲の作用を持つ身体の前面の筋肉である腹筋群・長腰筋群などです。
腰痛改善のためのメニュー(脊柱起立筋)
腰痛改善のためには脊柱起立筋を中心として、その共働筋や拮抗筋をトレーニングしていきますが、脊柱起立筋自体を鍛えるのは「腰痛がない時」であり、腰痛時の痛む部分そのものである脊柱起立筋を含む長背筋群を刺激するのは避ける必要があります。
下記の脊柱起立筋のトレーニング種目実施は非腰痛時に限り、なおかつ安全に十分に考慮した負荷設定で行ってください。
脊柱起立筋のトレーニング種目
腰痛改善のためのストレッチ
腰痛改善のためには、日頃から(非腰痛時)、脊柱起立筋の共働筋や拮抗筋のストレッチを実施し、それらの筋肉の柔軟性を高めておくことも有効です。
ストレッチとは
スポーツや医療の分野においてストレッチ(英: stretching)とは、 体のある筋肉を良好な状態にする目的でその筋肉を引っ張って伸ばすことをいう。筋肉の柔軟性を高め関節可動域を広げるほか、呼吸を整えたり、精神的な緊張を解いたりするという心身のコンディション作りにもつながるなど、様々な効果がある。
ストレッチの効果
厚生労働省によるストレッチの効果に関する記載
ストレッチングとは意図的に筋や関節を伸ばす運動です。体の柔軟性を高めるのに効果的であり、準備運動や整理運動の一要素としても活用されています。最近では美しい姿勢の保持やリラクゼーションの効果が明らかとなってきました。広い場所や道具を必要とすることなく行えることから、愛好者が増えている運動のひとつです。
ストレッチングにより柔軟性が増す理由は、筋の伸張反射の感受性が低下することと筋や靱帯の弾性要素が組織科学的変化を起こすことが要因です。また、ストレッチングは2-3メッツの強度がありますので筋温や体温を高める有効です。これらが柔軟性の向上やウォーミングアップ効果と関連しているのです。
最近ではこれらの効果に加えてリラクゼーションの効果が明らかとなってきました。
引用:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-04-006.html
ストレッチ実施の基本
ストレッチを行う場合の基本は以下の通りです。
①筋肉の収縮方向と反対方向に筋肉を伸ばす
②痛みを感じない程度にゆっくりと伸ばす
③30秒前後を目安とする
④呼吸を止めないように留意する
厚生労働省によるストレッチのやり方に関する記載
ストレッチングを実施する際に注意すべき原則は5つあります。「1. 時間は最低20秒」「2. 伸ばす筋や部位を意識する」「3. 痛くなく気持ち良い程度に伸ばす」「4. 呼吸を止めないように意識する」「5. 目的に応じて部位を選択する」ということです。
健康づくりの現場では安全第一で、傷害のリスクが少ないスタティックストレッチングが用いられることが多いようです。柔軟性の向上の効果に関してはスタティックストレッチングがダイナミックストレッチングに劣ることはないことがわかっています。パートナーストレッチングは補助者に高い技術を求められることが少なくないため、安全に実施するという観点からセルフスタティックストレッチングが勧められます。
引用:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-04-007.html
なお、具体的なストレッチのやり方に関しては下記の記事をご参照ください。
▼詳細記事
腰痛時でも実施可能な種目(共働筋・拮抗筋)
軽い腰痛であれば、腰に負担の少ない種目に限定してトレーニングを実施することも可能です。もちろん、十分に安全に配慮し、腰に痛みを感じる場合はすみやかにトレーニングを中断してください。
下記のトレーニング種目は脊柱起立筋の共働筋(広背筋・僧帽筋および臀筋群・ハムストリングス)、拮抗筋(腹筋群および腸腰筋群)の種目のなかから、腰に負担の少ないとされるものを選定しています。
広背筋・僧帽筋のトレーニング種目
臀筋群・ハムストリングスのトレーニング種目
腹筋群・腸腰筋群のトレーニング種目
筋力トレーニングと食事の基礎知識
筋力トレーニングを実施したら、そこで満足して終わるのではなく、トレーニング効果を最大限高める食事・栄養摂取をする必要があります。
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