筋肥大にとって最適とされる1種目あたりのセット数および1日あたりの総セット数の目安について解説します。
1種目あたりの有効なセット数
1セットよりも複数セットが有効
スポーツ科学・生理学の分野で一般的に有効と考えられているのが、「トレーニング種目は1セットよりも複数セットを行うほうが筋肥大に有効」ということで、これを示唆する論文も発表されています。
2010年のKriegerらは、1960年から2009年までに報告された研究をもとにメタ解析を行い、1セットより複数セットを行うことによって、有意に筋肥大が生じることを報告しました(Krieger JW, 2010)。
引用:https://www.rehabilimemo.com/entry/2017/08/02/121839
引用元参考論文:Krieger JW. Single vs. multiple sets of resistance exercise for muscle hypertrophy: a meta-analysis. J Strength Cond Res. 2010 Apr;24(4):1150-9.
1種目3セット程度が最適
また、複数セットもやりすぎは逆効果となり、3セット程度が筋肥大にはベストであるという論文が発表されています。
また2012年には、ノッティンガム大学のKumarらが筋肉のもとである筋タンパク質の合成作用の観点からトレーニングの最適なセット数について報告しました。その結果は興味深く、3セットと6セットの間には有意な筋タンパク質の合成作用の増加が認められず、セット数には「筋タンパク質の合成作用の限界点(anabolic limit)」があることを示しました。この報告によって、3セットを超えるセット数ではトレーニング効果がプラトーになる可能性が示唆されています(Kumar V, 2012)。
引用:https://www.rehabilimemo.com/entry/2017/08/02/121839
引用元参考論文:Kumar V, et al. Age-related differences in the dose-response relationship of muscle protein synthesis to resistance exercise in young and old men. J Physiol. 2009 Jan 15;587(1):211-7.
1日あたりの適正セット数
1種目3セットを基準にトレーニングを行う前提で、1日あたりの総セット数はどのくらいが適正なのでしょう?
多くの競技者・トレーニーが経験則的に行っているのが、1日あたりのセット数は10セット前後、多くても15セット程度というものです。
これは、体力的な意味もありますが、それ以上に集中力の問題が関与しています。
また、1日に全身を鍛えるようなトレーニングの場合、どうしても総セット数が増加してしまい体力的にも集中力としても非効率なトレーニングになりがちです。
ですので、効率的に筋肥大をしていくためには、週2~4回の部位分割トレーニングで、1日あたり10~15セットのトレーニングをしていくことが有効です。
なかでも、もっともスタンダードとされる部位分割プログラムが①上半身の押すトレーニング、②上半身の引くトレーニング、③下半身のトレーニングの3分割トレーニングです。
厚生労働省による超回復とトレーニング頻度に関する記載
筋肉には疲労からの回復の時間が必要です。レジスタンス運動は標的の筋肉に負荷を集中する運動ですから、その筋肉に十分な回復期間としてトレーニング間隔をあける必要があります。毎日行うのではなく、2-3日に一回程度、週あたり2-3回行うくらいの運動頻度が推奨されます。
引用:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-058.html
筋肉はレジスタンス運動を行うと筋線維の一部が破断されます。それが修復される際にもとの筋線維よりも少し太い状態になります。これを「超回復」と呼び、これを繰り返すと筋の断面積が全体として太くなり筋力が上がります。筋力のトレーニングはこの仕組みを利用して最大筋力に近い負荷でレジスタンス運動し、筋が修復されるまで2~3日の休息ののち、またレジスタンス運動でトレーニングということの繰り返しによって行われます。
引用:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-092.html
全身の筋肉を3つのグループに分ける
全身の筋肉を週3回の部位分割トレーニングのために3つに分けると以下のようになります。
①上半身の押す作用の筋肉+体幹の筋肉(前側)
具体的には以下の筋肉です。
大胸筋・三角筋・上腕三頭筋・前腕伸筋群・腹筋群・腸腰筋群
②上半身の引く作用の筋肉+体幹の筋肉(後側)
具体的には以下の筋肉です。
広背筋・僧帽筋・上腕二頭筋・前腕屈筋群・長背筋(脊柱起立筋)
③下半身の筋肉
具体的には以下の筋肉です。
大腿四頭筋・ハムストリングス(大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋)・臀筋群・内転筋群・下腿三頭筋
具体的な週3回の部位分割トレーニング例(自宅)
①週1回目のトレーニング(上半身の押す作用の筋肉+体幹の前側の筋肉)
①押す筋肉全体のメニュー:腕立て伏せ(膝つき腕立て伏せ)またはチューブチェストプレスまたはダンベルプレスを2~3セット
②大胸筋のメニュー:チューブチェストフライ(チューブプルオーバー)またはダンベルフライ(ダンベルプルオーバー)を2~3セット
③三角筋のメニュー:パイクプッシュアップまたはチューブショルダープレス(チューブアップライトロー)またはダンベルショルダープレス(ダンベルアップライトロー)を2~3セット
④上腕三頭筋のメニュー:ナロープッシュアップ(ベンチディップス)またはチューブフレンチプレス(チューブプレスダウン)またはダンベルフレンチプレス(ダンベルキックバック)を2~3セット
⑤腹筋群のメニュー:クランチ(クランチツイスト)またはチューブクランチまたはダンベルクランチ(ダンベルサイドベント)を1~2セット
⑥腸腰筋群のメニュー:レッグレイズまたはチューブレッグレイズまたはダンベルレッグレイズを1~2セット
②週2回目のトレーニング(下半身の筋肉)
①下半身全体のメニュー:自重スクワットまたはチューブスクワット(チューブレッグプレス)またはダンベルスクワットを2~3セット
②大腿四頭筋のメニュー:シシースクワットまたはチューブレッグエクステンションまたはダンベルレッグエクステンションを2~3セット
③ハムストリングスのメニュー:ブルガリアンスクワット(フロントランジ)またはチューブレッグカール(チューブスティッフレッグドデッドリフト)またはダンベルフロントランジ(ダンベルレッグカール)を2~3セット
④内転筋群のメニュー:ワイドスクワット(サイドランジ)またはチューブワイドスクワット(チューブアダクション)またはダンベルワイドスクワット(ダンベルサイドランジ)を2~3セット
③週3回目のトレーニング(上半身の引く作用の筋肉+体幹の後側の筋肉)
①引く筋肉全体のメニュー:懸垂(斜め懸垂)またはチューブデッドリフトまたはダンベルデッドリフトを2~3セット
②広背筋のメニュー:チューブラットプル(チューブローイング)またはダンベルローイングを2~3セット
③僧帽筋のメニュー:パラレル懸垂またはチューブショルダーシュラッグ(チューブリバースフライ)またはダンベルショルダーシュラッグを2~3セット
④上腕二頭筋のメニュー:逆手懸垂またはチューブカール(チューブハンマーカール)またはダンベルカールを2~3セット
⑤脊柱起立筋のメニュー:バックエクステンション(ヒップレイズ)またはチューブグッドモーニングを2~3セット
具体的な週3回の部位分割トレーニング例(ジム)
①週1回目のトレーニング(上半身の押す作用の筋肉+体幹の前側の筋肉)
①押す筋肉全体のメニュー:マシンチェストプレス(スミスマシンベンチプレス)またはバーベルベンチプレスを2~3セット
②大胸筋のメニュー:マシンチェストフライ(ケーブルフライ)またはバーベルインクラインベンチプレス(バーベルデクラインベンチプレス)を2~3セット
③三角筋のメニュー:マシンショルダープレス(ケーブルアップライトロー)またはバーベルショルダープレス(バーベルアップライトロー)を2~3セット
④上腕三頭筋のメニュー:マシンディップス(ケーブルプレスダウン)またはバーベルナローベンチプレス(バーベルフレンチプレス)を2~3セット
⑤腹筋群・腸腰筋群のメニュー:ケーブルクランチを2~3セット
②週2回目のトレーニング(下半身の筋肉)
①下半身全体のメニュー:マシンレッグプレス(スミスマシンスクワット)またはバーベルスクワットを2~3セット
②大腿四頭筋のメニュー:ハックスクワット(マシンレッグエクステンション)またはバーベルフロントスクワットを2~3セット
③ハムストリングスのメニュー:マシンレッグカールまたはバーベルフロントランジ(バーベルスティッフレッグドデッドリフト)を2~3セット
④内転筋群のメニュー:マシンアダクション(ケーブルアダクション)またはバーベルサイドランジを2~3セット
③週3回目のトレーニング(上半身の引く作用の筋肉+体幹の後側の筋肉)
①引く筋肉全体のメニュー:Tバーローイング(スミスマシンデッドリフト)またはバーベルデッドリフトを2~3セット
②広背筋のメニュー:ケーブルラットプルダウン(ケーブルローイング)またはバーベルベントオーバーロウを2~3セット
③僧帽筋のメニュー:ケーブルショルダーシュラッグまたはバーベルショルダーシュラッグを2~3セット
④上腕二頭筋のメニュー:マシンカール(ケーブルカール)またはバーベルカール(バーベルEZバーカール)を2~3セット
⑤脊柱起立筋のメニュー:スミスマシングッドモーニングまたはバーベルグッドモーニングを2~3セット