ダンクルオステウス(Dunkleosteus)は、古生代・デボン紀後期に生息していた甲冑魚で、板皮綱節頸目ディニクティス科に属している絶滅巨大魚です。ディニクティス科絶滅魚類は、本主を含めて全12属が発見されていますが、本種はそのなかでも最大種です。
ダンクルオステウスの形態
ダンクルオステウスの頭部から肩帯にかけてははまるで甲冑のような硬くて重い装甲板で覆われていました。さらには、強大で強靭な顎を持っていました(ただし歯はない)。この顎の装甲は捕らえた獲物を一撃で噛みちぎるほどの威力を持っていたと考えられており、その噛む力は440~530kgにも到達したと計算されています。
ダンクルオステウスの大きさ
ダンクルオステウスの最大全長は9m弱(8.79m)にもなったと考えられています。これは現生最大の肉食ザメであるホホジロザメの二倍、二番目に大きな現生種であるウバザメと同程度の巨大さです。
ダンクルオステウスの生態を再現した動画
こちらが、ダンクルオステウスの生きた泳ぐ姿を再現したCG動画です。その分厚い装甲板のため、動きは鈍重だったと推測されていますが、この時代にはまだ、遊泳力の強く早い動きをする生物がいなかったため、本種は食物連鎖の頂点に君臨できました。
しかし、その繁栄は長続きせず、デボン紀末期に起こった大絶滅によりほとんどの種が絶滅し、続く石炭紀には全ての種類が絶滅しました。これは、より動きの速い軟骨魚類の登場による淘汰であったと推測されています。
ダンクルオステウスの再現図
ダンクルオステウスの実際の表皮の様子などは推測するしかありませんが、いくつかの代表的な再現図を提示しておきます。
甲冑魚の分類
ダンクルオステウスに代表される甲冑魚は、分類上は板皮網(Placoderm)と呼ばれる絶滅魚群で、シルル紀からデボン紀の古生代に大繁栄した一群です。
その板皮網(Placoderm)は、以下の目から構成されていました(全て絶滅種)。
Acanthothoraciformes目
デボン紀前期に出現した海産の一群で、甲冑魚の中でももっとも古いタイプとされています。化石種は現在のユーラシア大陸および北アメリカ大陸最北部で確認されています。Brindabellapis属やMurrindalaspis属など、複数の属が知られています。
Rhenaniformes目
デボン紀に出現した海水魚の一群で、甲冑をまとったエイのような姿をしていました。1科が知られています。
胴甲目|Antiarchiformes
デボン紀に大繁栄した淡水産の甲冑魚で、2亜目7科に分類されています。底生生活に適応した形態をしており、底生生物(ベントス)を捕食していたと考えられています。
Ptyctodontiformes目
数属のみが発見されているマイナーな一群です。
Ptyctodontiformes目
デボン紀に出現し、石炭紀まで生き延びたと考えられている一群で、現生のギンザメに形態的特長が似ています(収斂進化)。
節頸目|Arthrodiriformes
Actinolepidae科
Actinolepidae科は、デボン紀初期に生息していた板皮類の科です。同科は節頸目の最も原始的なものの1つであると考えられており、系統発生的に節頸目の仲間の始祖であるとされています。
Camuropiscidae科
Camuropiscidae科の甲冑魚は、デボン紀後期に出現した紡錘形をした節頸目板皮魚類の仲間です。細長い管状の鼻が特徴です。
コッコステウス科|Coccosteidae科
コッコステウス科は、デボン紀初期から後期にかけて生息した節頸目板皮魚類です。
ディニクチス科|Dinichthyidae科
Dinichthys科の甲冑魚は、デボン紀後期に絶滅した巨大な海洋性節頸目板皮魚類です。そのサイズ・形・および生態学的特長はダンクルオステウスに匹敵するものでした。
ダンクルオステウス科|Dunkleosteidae科
Dunkleosteidae科は、巨大な頂点捕食者であるダンクルオステウス・テレッリを含むグループです。以前は前述のDinichthyidae科に分類されていましたが、最近の研究では相違点が認められ別の科に分けられています。
Selenosteidae科
Selenosteidae科は、デボン紀後期に生息していたやや小型の節頸目板皮魚類です。
ティタニクティス科|Titanichthyidae科
ティタニクティス科は、デボン紀後期の浅い海に生息していた巨大な海洋性板皮魚類です。本科の種の多くは、サイズと体格がダンクルオステウスに近いものだったことが知られています。
Wuttagoonaspidae科
Wuttagoonaspidae科は、初期デボン紀に出現した原始的な節頸目板皮魚類です。