チョウチョウウオの主な仲間について、その分類や生態、食性タイプごとの飼育方法について生物学の博物館学芸員である筆者が長年の飼育経験に基づいて解説します。
チョウチョウウオとはどんな仲間?
チョウチョウウオとはスズキ目チョウチョウウオ科に属する魚類の総称で、主に熱帯海域の珊瑚礁に分布しています。
チョウチョウウオの分類
チョウチョウウオ科には以下の属が含まれます。
チョウチョウウオ属|Chaetodon|88種
ハタタテダイ属|Heniochus|8種
ハシナガチョウチョウウオ属|Chelmon|3種
タキゲンロクダイ属|Coradion|3種
フエヤッコダイ属|Forcipiger|3種
カスミチョウチョウウオ属|Hemitaurichthys|4種
ゲンロクダイ属|Roa|5種
テンツキチョウチョウウオ属|Parachaetodon|2種
ウラシマチョウチョウウオ属|Prognathodes|11種
Amphichaetodon属|2種
Johnrandallia属|1種
Chelmonops属|2種
チョウチョウウオの食性
チョウチョウウオの食性は大きく以下の3パターンに分けられます。
①雑食性|甲殻類・ポリプ・藻類などを食べる
②プランクトン食|浮遊性小型生物を食べる
③ポリプ食|サンゴのポリプを食べる
チョウチョウウオの仲間は尖った吻を持つことが特徴の一つですが、その吻の鋭さは食性によって左右されます。つまり、吻は食性が①>②>③の順に尖っており、吻の形状である程度の食性を見分けることが可能です。
チョウチョウウオ水槽の基本セット
チョウチョウウオの飼育には水槽・外部フィルター・エアレーション・照明などの基本器具が必要です。また、適正飼育水温にするために、地域や魚種にあわせてサーモヒーター・チラーが必要になる場合もあります。
チョウチョウウオは熱帯魚なのでサーモヒータは必須になりますが、30℃を超えるような高水温意は弱い種類が多いため、飼育する地域・設置室内環境によってはチラーが必要になる場合もあります。
なお、淡水魚の場合と違い、投げ込みフィルターは濾過能力不足のため、上部フィルターは塩が散るため適しません。なお、外部フィルターも水槽に直接設置ではなく、クッションタンクを使用して総飼育水量を増やし水質を安定させることをおすすめします。
なお、淡水魚の場合と違い、投げ込みフィルターは濾過能力不足のため、上部フィルターは塩が散るため適しません。なお、外部フィルターも水槽に直接設置ではなく、クッションタンクを使用して総飼育水量を増やし水質を安定させることをおすすめします。
それでは、次の項目からは主なチョウチョウウオの種類を「おいうえお順」でご紹介していきます。詳細な飼育方法などは各項目にリンクしている種類ごとの解説記事をご参照ください。
アケボノチョウチョウウオ(チョウチョウウオ属)
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アケボノチョウチョウウオ太平洋・インド洋・紅海の熱帯海域に広く分布しており、最大で全長18cmほどになります。主にミドリイシ(サンゴ)のポリプなどを餌として食べています。
▼詳細記事
アミチョウチョウウオ(チョウチョウウオ属)
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アミチョウチョウウオは太平洋の中西部およびインド洋の熱帯海域に広く分布しており、最大で全長15cmになります。
▼詳細記事
イッテンチョウチョウウオ(チョウチョウウオ属)
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イッテンチョウチョウウオは太平洋中部から西部にかけての熱帯海域に広く分布しており、最大で全長20cmになります。ソフトコーラル・カイメン・藻類などを餌として食べています。
ユウゼン(チョウチョウウオ属)
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ユウゼンは八丈島から小笠原諸島にかけての熱帯珊瑚礁海域に分布しています。日本固有種です。最大で全長15cmになります。動物プランクトン・藻類などを餌として食べています。
▼詳細記事
ウラシマチョウチョウウオ(ウラシマチョウチョウウオ属)
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ウラシマチョウチョウウオは太平洋西部から南部の熱帯海域の深い深度(100~200m)に分布しており、最大で全長15cmほどになります。野生では雑食性であると推測されていますが、深海性のためまだ解明されていない部分が多い種類です。
オニハタタテダイ(ハタタテダイ属)
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オニハタタテダイは太平洋中部・西部およびインド洋の亜熱帯~熱帯海域に分布しており、日本では中部地方以南に生息しています。最大で全長25cmになるチョウチョウウオ科魚類としては大型の種類です。甲殻類・ゴカイ類・藻類などを餌として食べています。
ゲンロクダイ(ゲンロクダイ属)
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ゲンロクダイは太平洋西部(インドネシア・フィリピン・台湾・日本など)に分布しており、国内では茨城県以南に生息しています。最大で全長17cmになります。小型甲殻類・藻類などを餌として食べています。
カスミチョウチョウウオ(カスミチョウチョウウオ属)
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カスミチョウチョウウオは太平洋中西部からインド洋の一部にかけての熱帯〜亜熱帯海域に分布しており、最大で全長18cmになります。野生ではプランクトンなどを餌として食べています。
シマハタタテダイ(ハタタテダイ属)
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シマハタタテダイは太平洋の中部・西部からインド洋にかけての亜熱帯~熱帯海域に分布しており、日本国内では中部地方以南に生息しています。サンゴのポリプ・底生小型甲殻類・藻類などを餌として食べています。
スダレチョウチョウウオ(チョウチョウウオ属)
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スダレチョウチョウウオは太平洋中部に分布しており、日本では相模湾以南に生息しています。最大で全長18cmになります。底生小動物や藻類などを餌として食べています。
セグロチョウチョウウオ(チョウチョウウオ属)
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セグロチョウチョウウオは太平洋西部からインド洋にかけての熱帯海域に分布しています。最大で全長20cmになります。サンゴのポリプ・底生性の小動物・海藻などを餌として食べています。
チョウチョウウオ(チョウチョウウオ属)
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チョウチョウウオは太平洋西部の熱帯域に分布しています。国内では、房総半島以南および琉球列島・小笠原諸島に生息しています。最大で全長20cmになります。野生では甲殻類・カイメン・藻類などを餌として食べています。
チョウハン(チョウチョウウオ属)
チョウハンは太平洋の全域・オセアニア・インド洋全域の亜熱帯から熱帯にかけての広範囲に分布しており、日本では房総半島以南に生息しています。全長25cmとチョウチョウウオのなかでは大型の部類です。サンゴのポリプ・底生小動物・藻類などを餌として食べています。
トゲチョウチョウウオ(チョウチョウウオ属)
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トゲチョウチョウウオは紅海・太平洋・インド洋の熱帯海域に分布しており、最大で全長20cmになります。野生では動物性プランクトン・ポリプ・イソギンチャク・藻類などを餌として食べています。
ハシナガチョウチョウウオ(ハシナガチョウチョウウオ属)
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ハシナガチョウチョウウオは太平洋西部からインド洋東部の熱帯海域に分布しており、最大で全長20cmになります。主に小型甲殻類などを餌として食べています。
ハタタテダイ(ハタタテダイ属)
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ハタタテダイは太平洋およびインド洋の熱帯海域のサンゴ礁に分布しています。本種は耐寒性が高く日本の本州沿岸でも見られます。最大で全長25cmとチョウチョウウオとしては大型の部類です。動物性プランクトンや藻類などを餌として食べています。
フエヤッコダイ(フエヤッコダイ属)
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フエヤッコダイは太平洋の全域およびインド洋の全域の熱帯海域に分布しており、チョウチョウウオの仲間としてはもっとも広い分布域を持っています。国内では石垣島周辺で多く見られます。最大で全長18cmになります。甲殻類やゴカイなどを餌として食べています。
フウライチョウチョウウオ(チョウチョウウオ属)
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フウライチョウチョウウオは紅海と西部太平洋の熱帯海域に分布しており、最大で全長20cmほどになるチョウチョウウオとしては大型の種類です。野生では藻類・サンゴのポリプ・小型甲殻類などを餌として食べています。
▼詳細記事
ミナミハタタテダイ(ハタタテダイ属)
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ミナミハタタテダイ太平洋の中部から西部にかけての亜熱帯~熱帯海域に分布しており、国内では中部地方以南に生息しています。最大で全長18cmほどになります。サンゴのポリプを餌として専食しています。
ムレハタタテダイ(ハタタエダイ属)
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ムレハタタテダイは太平洋の中部・西部からインド洋・紅海の亜熱帯~熱帯海域に分布しており、国内では中部地方以南に生息しています。最大で全長21cmになるチョウチョウウオ類としては大型種です。プランクトンや藻類などを餌として食べています。
ヤリカタギ(チョウチョウウオ属)
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ヤリカタギは紅海・インド洋・太平洋西部の水深30m前後の熱帯海域に広く分布していますが、国内では生息数が減少しており準絶滅危惧種に指定されています。最大で全長18cmほどになり、ミドリイシのポリプを専食しています。