食肉目ネコ科のなかでも猛獣と呼ばれる種類を、生物学博物館学芸員の筆者が一覧形式で解説するとともに、絶滅した化石種のネコ科猛獣の代表種も再現CGやイラストをまじえながらご紹介します。
ネコ科猛獣とは?
ネコ科には現生のネコ亜科・ヒョウ亜科のほかに絶滅群であるマカイロドゥス亜科などがあります。
これらのなかで、特に大型で獰猛な種類を「猛獣」と呼びます。具体的には以下のようになります。
ネコ科の猛獣一覧(分類)
ネコ亜科|Felinae
チーター属|Acinonyx
チーター|Acinonyx jubatus
ピューマ属|Puma
ピューマ|Puma concolor
ヒョウ亜科|Pantherinae
ヒョウ属|Panthera
ライオン|Panthera leo
ホラアナライオン|Panthera spelaea(化石種)
アメリカライオン|Panthera atrox(化石種)
トラ|Panthera tigris
ロングダントラ|Panthera zdanskyi(化石種)
ジャガー|Panthera onca
ヒョウ|Panthera pardus
ユキヒョウ|Panthera uncia
マカイロドゥス亜科|Machairodontinae
ホモテリウム属|Homotherium
Homotherium ischyrus(化石種)
Homotherium latidens(化石種)
Homotherium serum(化石種)
Homotherium venezuelensis(化石種)
ディノフェリス属|Dinofelis
Dinofelis aronoki(化石種)
Dinofelis barlowi(化石種)
Dinofelis cristata(化石種)
Dinofelis darti(化石種)
Dinofelis diastemata(化石種)
Dinofelis paleoonca(化石種)
Dinofelis petteri(化石種)
Dinofelis piveteaui(化石種)
スミロドン属|Smilodon
Smilodon populator(化石種)
Smilodon fatalis(化石種)
Smilodon gracilis(化石種)
それでは、次の項目からはネコ科の猛獣を種類ごとにご紹介していきます。
なお大きさの比較データの「体長」とは尾の長さを含めない、頭から尻端までの長さで、生物学では頭胴長と呼ばれるスケールです。
チーター|Acinonyx jubatus
チーターはサバンナや草原に特化したネコ科猛獣で、その走行スピードが世界最速(時速130km)であることはあまりに有名です。
アフリカ大陸の砂漠と熱帯雨林を除くほぼ全域に分布しており、イランにも一部が分布しています。
ネコ科猛獣としては細身で、全長はあるもののかなり軽い部類に入ります。
最大体長150cm・最大体重72kg
ピューマ|Puma concolor
ピューマは北米南西部~中南米~南米大陸全域に分布しています。
単独性で、時にヘラジカなどの大型草食獣も狩ることがある北アメリカ大陸最強の猛獣です。
最大体長168cm・最大体重80kg
ライオン|Panthera leo
ライオンはアフリカ大陸からインド亜大陸にかけて分布する大型のネコ科肉食獣で、オスの体重は250kg前後にもなり、トラにつぐ大きさです。
群れで大型草食獣を狩る(狩りは主にメスの役目)ことであまりに有名です。
最大体長250cm・最大体重250kg
▼詳細記事
ホラアナライオン|Panthera spelaea(化石種)
ホラアナライオン(別名:ドウクツライオン)は更新世(約1万年前まで)に生息していた絶滅種で、ユーラシア大陸に分布していました。
本種の冷凍個体が3頭、シベリアの永久凍土から発見されており、氷河期に適応した長い毛を持っていたことなどが判明しています。
アメリカライオン|Panthera atrox(化石種)
アメリカライオンはホラアナライオンに近縁な、更新世(約1万年前まで)に生息していた絶滅種で、北アメリカ大陸に分布していました。
トラ|Panthera tigris
トラはアフリカライオンに比べても一回り大きく、ネコ科猛獣のなかでも最大の種類です。
トラは群れを作らず単独で生活し、大きなものではスイギュウ・イノシシ・シカなどを捕食しています。このほかにも、鳥類・カメ類・ワニ・カエル・魚類なども食べます。
記録は稀ですが、インドゾウ・ヒグマなどの大型哺乳類を倒した記録もあります。化石種を含め、トラがネコ科猛獣のなかで史上最強と言えるでしょう。
最大体長280cm・最大体重300kg
▼詳細記事
ロングダントラ|Panthera zdanskyi(化石種)
ロングダントラは更新世初期(200万年前頃)に中国に分布していた初期のトラで、現生のトラよりも小型でヒョウ程度の大きさでした。
ジャガー|Panthera onca
ジャガーは中南米と南アメリカ大陸全域の熱帯雨林・マングローブ林・湿地林などに分布する森林性のネコ科猛獣です。指先が丸く大きくなっており、ぬかるみでも足を取られにくい特性があります。
夜行性でカピバラ・アリクイ。ナマケモノといった中型哺乳類を捕食しています。
最大体長150cm・最大体重90kg
ヒョウ|Panthera pardus
ヒョウは、アフリカ大陸からアラビア半島・東南アジア・ロシア極東にかけて分布しており、ネコ科猛獣のなかでもっとも広い生息域を持ちます。生息環境にもよく適応でき、熱帯雨林からサバンナ、はては都市部の郊外にまで生息しています。
単独性で主に中型の有蹄類(シカなど)を捕食しています。
最大体長150cm・最大体重90kg
ユキヒョウ|Panthera uncia
ユキヒョウはインド北部・アフガニスタン・カザフスタンなど中央アジアの山岳地帯に分布しています。
単独性で、シカ類・イノシシ類のほか小動物を捕食しています。
最大体長125cm・最大体重53kg
ホモテリウム属|Homotherium(化石種)
剣歯虎(サーベルタイガー)の仲間は、絶滅ネコ科群(マカイロドゥス亜科)の一群です。
ホモテリウムは剣歯虎(サーベルタイガー)のなかでも古い属で、約1万年前に絶滅しました。
現在までに以下の4種が発見されています。
Homotherium ischyrus
Homotherium latidens
Homotherium serum
Homotherium venezuelensis
ディノフェリス属|Dinofelis(化石種)
ディノフェリスは約120万年前に絶滅した剣歯虎(サーベルタイガー)で、ヨーロッパ・アジア・アフリカ・北アメリカに広く分布していました。
現在までに以下の8種が発見されています。
Dinofelis aronoki
Dinofelis barlowi
Dinofelis cristata
Dinofelis darti
Dinofelis diastemata
Dinofelis paleoonca
Dinofelis petteri
Dinofelis piveteaui
スミロドン属|Smilodon(化石種)
スミロドンは最も有名であり最大の剣歯虎(サーベルタイガー)で、1万年前まで南北アメリカ大陸に分布していました。
Smilodon populator
Smilodon fatalis
Smilodon gracilis
これまでに、上記三種が発見されています。
ネコ科猛獣の大きさ比べ
現生のネコ科猛獣の大きさをわかりやすく比較したものがこちらのイラストです。
ここまで解説してきたように、その大きさは以下のようになります。
①トラ:最大体長280cm・最大体重300kg
②ライオン:最大体長250cm・最大体重250kg
③ジャガー:最大体長150cm・最大体重90kg
③ヒョウ:最大体長150cm・最大体重90kg
⑤ピューマ:最大体長168cm・最大体重80kg
⑥チーター:最大体長150cm・最大体重72kg
⑦ユキヒョウ:最大体長125cm・最大体重53kg
※ジャガーとヒョウは同3位
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