チョウチンアンコウの種類と生態について生物学博物館学芸員の筆者が解説します。チョウチンアンコウは餌を獲るための発光器官を持っていたり、オスがメスに比べると極端に小さいなど、とても変わった生態を持っています。
なお、本記事の画像類はwikipediaおよびDeep-sea thriller: The gothic romance of anglerfishより引用しています。
チョウチンアンコウとはどんな魚?
チョウチンアンコウは中深海(深度200~800m)に生息している底生のアンコウ目に属する深海魚で、大西洋・太平洋・インド洋の熱帯から亜熱帯の海域に分布しています。
外見的な特徴として、餌を引き寄せるための発光器官=誘引突起(イリシウム)を持っていることが大きな特徴です。
こちらの画像は、新江ノ島水族館の調査によって世界で初めて撮影された、チョウチンアンコウが発光器官を光らせている様子を捉えた動画です。
チョウチンアンコウの発光器官の仕組み
チョウチンアンコウの発光の仕組みは長らく不明のままでした。
多くの深海魚は、発光バクテリアを腸内で共生させて利用する「共生発光」を行います。また、これとは別に体内で生産したルシフェリンを利用して「自力発光」する種類もあります。
チョウチンアンコウの発光は、最新の研究では発光バクテリアである共生ビブリオ属細菌を利用していることが判明しています。
しかしながらmこの細菌は難培養性のため確認が難しく、最近まで「共生細菌によらない自力発光」であると考えられていました。
ただし、チョウチンアンコウは腸内でこの細菌を共生させておらず、どこからこの発光細菌が発生しているのかは不明のままです。
チョウチンアンコウのオスの形態
こちらはチョウチンアンコウのオス(成体)です。
いわゆるチョウチンアンコウの風貌はしておらず、発光器官も持たずオタマジャクシのような外見です。
このように、メスに比べてオスが極端に小さいことを生物学では矮雄(わいゆう)と言います。
チョウチンアンコウのオスは、このような脆弱な形態であり、餌を獲るための発光器官も歯も持たないため、メスの体表に噛み付くとそのまま一体化(皮膚も癒着する)し、栄養はメスの血管から直接摂取します。
そして、成熟すると繁殖に参加します。
チョウチンアンコウの骨格
チョウチンアンコウは硬骨魚のなかでも進化の進んだ(骨格の発達した)一群です。
深海魚の多くは、深海で効率的に中性浮力をとるために、骨が退化している種類が多いのですが、本種は底生魚のため浮く必要があまりなく、その骨格はしっかりとしたまま残っています。
チョウチンアンコウの種類
チョウチンアンコウの仲間はアンコウ目チョウチンアンコウ科(Himantolophidae)に含まれ、チョウチンアンコウ科は1属(Himantolophus属)18種で構成されています。
その全18種類は以下のとおりです。
チョウチンアンコウ H. groenlandicus
キタチョウチンアンコウ H. borealis Kharin
シロホシチョウチンアンコウ H. albinares
H. appelii
H. brevirostris
H. compressus
H. cornifer
H. crinitus
H. danae
H. macroceras
H. macroceratoides
H. mauli
H. melanolophus
H. multifurcatus
H. nigricornis
H. paucifilosus
H. pseudalbinares
H. sagamius
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