日本産淡水魚の中でも家庭で飼育しやすい小型魚~中型魚を厳選し、博物館学芸員の筆者が、種類の特徴・飼い方を解説するとともに水槽のセットの方法もご紹介します。
なお、全種類について記載すると膨大な量になりますので、本記事には飼育される機会の多い種類のみ記載し、他の種類についてはあいうえおの行別にまとめて一覧リンクにしています。
マイナーな種類の飼育方法については各リンク先をご参照ください。
日本産淡水魚の入手について
日本産淡水魚の入手にあたっては、次のことに留意ください。
遺伝子のかく乱を避けるため、入手した日本産淡水魚は野外へは放流せずに必ず最後まで飼いきるようにしてください。
日本産淡水魚は種類・地域により保護されている場合がありますので、野外採集はせずブリード個体を入手してください。
初心者向き家庭用水槽セット
エアーフィルターor上部フィルターor外部フィルターの三択
家庭用の水槽セットには、大きくエアーフィルター・上部フィルター・外部フィルターの三種類のシステムがあり、それぞれの特徴は以下の通りです。
エアーフィルター
もっともシンプルな水槽セット・システムでトラブルが少なく扱いやすい反面、ろ過能力は低めで週一回頻度の水換えとフィルター掃除が必要です。水草には不向きです。
上部フィルター
もっとも一般的な家庭用水槽セット・システムでメンテナンスが簡単で、フィルター掃除や水換えも月に一回頻度でかまいません。水草には不向きです。
外部フィルター
もっとも高性能な家庭用水槽セット・システムで水換えは月に一回、フィルター掃除は年数回でかまいません。水草を楽しむなら必須のシステムです。
これら三種類のろ過システムから、飼育したい魚の数や水草の有無で適正なタイプを決めてください。
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それでは、次の項目からは日本産の淡水魚を順にご紹介していきます。
アカヒレタビラの特徴と飼い方
適正水質:中性~弱酸性
適正水温:0~28℃
餌の種類:アカムシやテトラミンなどフレーク状配合餌料
繁殖:可能
混泳:要注意
アカヒレタビラは関東地域にに分布しているシロヒレタビラの亜種で、、しりびれの真紅のラインが人気です。丈夫で飼いやすい種類ですが、やや気が強い傾向があり、他種との混泳には注意が必要です。
アブラハヤの特徴と飼い方
適正水質:中性~弱酸性
適正水温:0~20℃
餌の種類:冷凍赤虫・配合飼料など
繁殖:難しい
混泳:可能
アブラハヤは河川の上流域に生息しており、高水温が苦手です。
このため飼育水槽には必ずチラーを設置し、水温が20℃を超えないようにすることが大切です。
アブラボテの特徴と飼い方
適正水質:中性~弱酸性
適正水温:0~28℃
餌の種類:冷凍赤虫や配合飼料
繁殖:可能
混泳:可能
アブラボテは日本産タナゴ類のなかでも比較的普通に見られる種類です。性質は温和で他種との混泳も問題ありません。
イチモンジタナゴの特徴と飼い方
適正水質:中性~弱酸性
適正水温:0~28℃
餌の種類:アカムシやテトラミンなどフレーク状配合餌料
繁殖:可能
混泳:可能
イチモンジタナゴは温和な性質をしており、飼いやすく混泳も可能です。繁殖は春から夏にかけて行われ、大型のドブガイやカラスガイといった淡水産二枚貝に産卵します。
なお、二枚貝を入れるとオス同士が激しく争い始めるので注意が必要です。
オイカワの特徴と飼い方
適正水温:0~25℃
餌の種類:冷凍赤虫・配合餌料など
繁殖:可能
混泳:やや難しい
オイカワは河川の中流域に生息するコイ科魚類です。
生息域が中流域のため高水温と酸欠には弱く、飼育水温が25℃を超えないようにすることが大切です。
オヤニラミの特徴と飼い方
適正水質:中性~弱酸性
適正水温:0~25℃
餌の種類:冷凍赤虫・メダカなど生餌
繁殖:可能
混泳:難しい
オヤニラミは水質の良好な河川中流域に生息しており、高水温に弱い傾向があります。このため、夏場でも水温25℃を超えないようにすることが大切です。
その他あ行の淡水魚の種類と飼い方
アカザ・アマゴ・アユカケ・イトモロコ・イトヨ・イワナ・ウキゴリ・ウグイ・ウナギ・ウロハゼ
カネヒラの特徴と飼い方
適正水質:中性~弱酸性
適正水温:0~28℃
餌の種類:アカムシやテトラミンなどフレーク状配合餌料
繁殖:可能
混泳:可能
性質はおとなしく混泳も可能ですが、身体が大きいのでどうしても他種を圧倒しがちですので、こまめに様子をみることが大切なポイントです。
カマツカの特徴と飼い方
適正水質:中性~弱酸性
適正水温:0~28℃
餌の種類:沈性の配合餌料
繁殖:困難
混泳:可能
カマツカは底性のコイ科魚類で、砂のなかに潜り目だけを出した姿が可愛らしく、鑑賞魚としても人気です。
性質は温和で飼いやすく、混泳も問題ありませんが、水槽内での繁殖は困難です。また、底砂を掘り返す習性がありますので、水草との相性はよくありません。
カムルチーの特徴と飼い方
適正水質:中性~弱酸性
適正水温:0~30度
餌の種類:小赤やメダカなどの生き餌
繁殖:困難
混泳:困難
雷魚と呼ばれる帰化魚には二種類があり、一つが体色が明るく柄の大きなカムルチー、もう一つが体色が暗く柄の細かいタイワンドジョウです。別種ですが近縁種ですので、両者の飼育方法に差異はありません。
南方種で空気呼吸も行うため、高温・酸欠・水質悪化に強く、きわめて頑強で飼いやすい種類で、餌はメダカや小赤などの生き餌が主体ですが、慣れてくると刺身なども食べるようになります。
カワバタモロコの特徴と飼い方
適正水質:中性~弱酸性
適正水温:0~28℃
餌の種類:
繁殖:可能
混泳:可能
カワバタモロコは高水温にも強く、丈夫で飼いやすい種類で、性質もおとなしいため混泳も可能です。
繁殖も容易で、水槽内で気づかないうちに増えていることもあるくらいです。
カワムツの特徴と飼い方
適正水温:0~28℃
餌の種類:冷凍赤虫・配合飼料など
繁殖:可能
混泳:やや難しい
カワムツは河川の上〜中流域に生息するコイ科魚類です。
生息域は上〜中流域ですが、対応できる水温の幅は広く、30℃近い高水温でも元気に飼育可能です。
砂礫の底砂があれば、かなり容易に産卵し、孵化仔魚も比較的大きいので育成は難しくありません。
その他か行の淡水魚の種類と飼い方
カゼトゲタナゴ・カワヒガイ・ギギ・ギバチ・キンブナ・ギンブナ
シマドジョウの特徴と飼い方
適正水質:中性~弱酸性
適正水温:0~28度
餌の種類:沈性の小粒配合餌料
繁殖:困難
混泳:容易
水槽の底砂には粒径の細かい砂を敷き、沈性の小粒配合餌料を餌に与えます。
性質はおとなしく、他種との混泳は全く問題ありません。上手く飼えば5年ほどの寿命がありますが、水槽内での繁殖は困難です。
シロヒレタビラの特徴と飼い方
適正水質:中性~弱酸性
適正水温:0~28℃
餌の種類:アカムシやテトラミンなどフレーク状配合餌料
繁殖:可能
混泳:要注意
丈夫で飼いやすい種類ですが、やや気が強い傾向があり、他種との混泳には注意が必要です。繁殖は比較的容易で、カタハガイやドブガイなど淡水二枚貝に、春から夏にかけて産卵します。
その他さ行の淡水魚の種類と飼い方
タカハヤの特徴と飼い方
適正水温:0~20℃
餌の種類:冷凍赤虫・配合飼料など
繁殖:難しい
混泳:可能
タモロコの特徴と飼い方
適正水質:中性~弱酸性
適正水温:0~30度
餌の種類:アカムシやテトラミンなどフレーク状配合餌料
繁殖:可能
混泳:可能
タモロコはとてもおとなしい性質で他種との混泳とも容易な種類です。また、高温に強く飼いやすく初心者向きの魚と言えるでしょう。
ツチフキの特徴と飼い方
適正水質:中性~弱酸性
適正水温:0~28℃
餌の種類:沈性の配合餌料
繁殖:可能
混泳:可能
ツチフキ温和な性質をしていますので、他種との混泳は容易です。
カマツカよりもさらに粒径の細かい砂底を好み、砂ごと飲み込み砂中の餌を濾しとって食べたり、砂に潜ったりします。
その他た行の淡水魚の種類と飼い方
ナマズの特徴と飼い方
適正水質:中性~弱酸性
適正水温:0~30度
餌の種類:小赤(生き餌)やキャットなど肉食魚用配合餌料
繁殖:困難
混泳:困難
ナマズは在来の日本産淡水魚の食物連鎖の頂点に立つ肉食魚で、他種との混泳はほぼ不可能です。
高温に強く、水質にもあまりうるさくないので、飼育自体は安易な部類に入ります。ただし、ちょっとした隙間から蓋をこじ開けて飛び出しますので、しっかりと隙間のない蓋をする必用があります。
その他な行の淡水魚の種類と飼い方
ハスの特徴と飼い方
適正水質:中性~弱酸性
適正水温:0~26℃
餌の種類:小赤・メダカなどの生き餌
繁殖:困難
混泳:困難
餌はメダカや小赤などの生き餌が基本ですが、慣れてくるとキャットなど肉食魚用配合餌料も食べるようになります。
やや高温に弱い傾向がありますので、水槽用ファンをつけるか、場合によってはチラーを設置して夏場の暑さ対策をしてください。
なお、食べてしまうので、他種との混泳は困難です。
ボウズハゼの特徴と飼い方
適正水質:中性~弱酸性
適正水温:0~25℃
餌の種類:付着藻類・プレコフード
繁殖:難しい
混泳:可能
ボウズハゼは河川の底石などに生えた付着藻類を主食とする魚です。
このため、プレコフードなど草食性魚種用の餌を与える必要があります(水槽内に生える付着藻類では足りないため)。
ホトケドジョウの特徴と飼い方
適正水質:中性~弱酸性
適正水温:0~22℃
餌の種類:小赤など生餌
繁殖:困難
混泳:可能
ホトケドジョウは冷たい湧き水のある里山の上流部に生息しています。このため、高水温には弱く、25℃(一時的に)が上限ですが、基本的には22℃以下で飼育します。
水温さえ合えば他の小型魚との混泳は可能ですが、隠れる場所を作ってあげる必要があります。
ミナミトビハゼの特徴と飼い方
適正水質:中性~弱アルカリ性
適正水温:20~28℃
餌の種類:テトラミンなどフレーク状配合餌料
繁殖:困難
混泳:可能
ミナミトビハゼは沖縄周辺に生息する汽水域のハゼ科魚類で、陸場で生活する珍しい生態から鑑賞魚としても人気が高く、夏場には専門店などで流通しています。
本種は水中でのエラ呼吸のほか、陸場での皮膚呼吸も行いますので、かならず水槽内に陸場を作ってください。また、冬の寒さに弱いため、ヒーターを設置して加温することが必須です。
ムギツクの特徴と飼い方
適正水質:中性~弱酸性
適正水温:0~25℃
餌の種類:冷凍赤虫・配合飼料など
繁殖:可能
混泳:可能
ムギツクは河川の上〜中流域にかけて生息しており、やや高水温に弱い傾向がありますが、それ以外は丈夫で飼いやすい魚です。
性質もおとなしいため、他の魚種との混泳も可能です。
メダカの特徴と飼い方
適正水質:中性~弱酸性
適正水温:0~30℃
餌の種類:配合飼料・ミジンコなど生餌
繁殖:容易
混泳:やや難しい
メダカは飼いやすく、高水温や酸欠にも強いため古くから日本各地で飼育され、現在ではさまざまな品種も盛んに養殖されています。
ただし、「横から見られる」ことにストレスを感じやすい種類のため、ガラス水槽で飼育することは可能ですが、繁殖は難易度が上がります。
モツゴの特徴と飼い方
適正水質:中性~弱酸性
適正水温:0~28℃
餌の種類:冷凍赤虫・配合飼料など
繁殖:可能
混泳:可能
モツゴは河川下流域や池に生息しており、飼育下の高水温にも耐える丈夫で飼いやすい魚です。
性質もおとなしく、「クチボソ」の別名通り口が小さいため他の魚種に危害を加えることはありません。混泳向きの種類です。
ヤリタナゴの特徴と飼い方
適正水質:中性~弱酸性
適正水温:0~28℃
餌の種類:アカムシやテトラミンなどフレーク状配合餌料
繁殖:可能
混泳:可能
ヤリタナゴは丈夫で飼いやすく、性質もおとなしいため他種との混泳も可能です。また、高温や水質悪化にも強く、初心者の方でも問題なく飼育することができます。
ヨシノボリの特徴と飼い方
適正水質:中性~弱酸性
適正水温:0~28℃
餌の種類:冷凍赤虫
繁殖:難しい
混泳:可能
ヨシノボリは高水温にも適応し、丈夫で飼いやすい種類ですが、やや酸欠に弱い傾向がありますので、必ずエアレーションをするようにします。
性質もおとなしいので混泳も可能です。
河川で産卵し、孵化仔魚は海まで流されて浮遊生活を送る時期があるため、家庭内の水槽で繁殖させることは困難です。
ワタカの特徴と飼い方
適正水質:中性~弱酸性
適正水温:0~28度
餌の種類:水草または配合餌料
繁殖:可能
混泳:可能
ワタカは水草を食べる草食性コイ科魚類とされていますが、実は雑食性なので市販のコイの餌など配合餌料で飼育可能です。
ただし、大きな個体ほど草食傾向が高まりますので、水草や煮たホウレン草などをおやつかわりに与えてください。また、ふやかしたプレコフードなど、草食魚用の配合餌料でも問題ありません。
活餌としてのミジンコ飼育
ミジンコは淡水魚の活餌として非常に優秀ですので、ぜひ、自宅で飼育養殖したいものです。
下記の記事では、具体的なミジンコの飼い方・増やし方を解説しています。
▼ミジンコの飼い方・増やし方
ミジンコの飼い方・増やし方(繁殖方法)|飼育方法(水温・餌・水換え・寿命・生態)について解説