生きた化石と呼ばれる古代魚の生き残り=現在でも生存しているシーラカンスの現生2種と、進化の過程で絶滅していった化石種について、生物学の博物館学芸員が解説します。
シーラカンスとはどんな魚?
広い意味でのシーラカンスとは、硬骨魚綱シーラカンス目(Coelacanthiformes)に属する魚類の総称です。
シーラカンス目の種類
シーラカンス目には以下の科が含まれます。
絶滅:シーラカンス科|Coelacanthidae
絶滅:ディプロケルキデス科|Diplocercidae
絶滅:ハドロネクトル科|Hadronectoridae
絶滅:マウソニア科|Mawsoniidae
絶滅:ミグアサイア科|Miguashaiidae
現生:ラティメリア科|Latimeriidae
絶滅:ラウギア科|Laugiidae
絶滅:ラブドデルマ科|Rhabdodermatidae
絶滅:ウィテイア科|Whiteiidae
このように、シーラカンス目のほとんどの科が絶滅しており、現生はラティメリア科のみです。
シーラカンス目に共通の特徴
図:絶滅種の復元イラスト
シーラカンス目魚類は古生代に出現し、中生代に大繁栄を迎えました。
中生代には海だけでなく淡水域にも分布を広げといたと考えられています。
これらシーラカンス目には共通の特徴があり、それは以下の通りです。
8つの肉鰭を持つ
シーラカンスは、魚類から進化して陸上に上がった脊椎動物である両生類の直接の祖先ではありません。
しかしながら、シーラカンスに近い仲間(肉鰭を持つ魚)から、肉鰭が四肢となり両生類が進化したと考えられています。
浮袋は脂肪で満たされている
シーラカンスの仲間は深海に適応するため、浮袋には空気ではなく脂肪が満たされています。
卵胎生
長らくシーラカンスの繁殖については謎に包まれていましたが、化石から卵胎生であることが推測されていました。
このことは、近年になり現生シーラカンスの解剖によって証明されました。
ラティメリア科の種類
図:絶滅種マクロポマ属の一種
ラティメリア科には以下の属が含まれます。
絶滅:ホロファグス属|Holophagus
絶滅:リビス属|Libys
絶滅:マクロポマ属|Macropoma
絶滅:マクロポモイデス属|Macropomoides
絶滅:メガコエラカントゥス属|Megacoelacanthus
現生:ラティメリア属|Latimeria
絶滅:ウンディナ属|Undina
このように、ラティメリア科に含まれる属はラティメリア属のみを残して全て絶滅しています。
ラティメリア属の現生2種
ラティメリア属には以下の2種(いずれも現生種)があります。
ラティメリア・カルムナエ|L. chalumnae
ラティメリア・メナドエンシス|L. menadoensis
ラティメリア属の分布
現生シーラカンス2種は上図のように分布しています。
ラティメリア・カルムナエはアフリカ大陸東海岸沿いに分布しており、初めて発見されたシーラカンス(コモロ沖)が本種です。
このため、便宜上本種を「コモロシーラカンス」と呼ぶ場合もあります。
一方、ラティメリア・メナドエンシスは1997年にインドネシアのスラウェシ島沖で発見されました。
ですので、本種はインドネシアシーラカンスとも呼ばれています。
コモロシーラカンス|L. chalumnae
コモロシーラカンスは1938年12月22日に初めて発見されましたが、場所はコモロ沖ではなく南アフリカ沖で、トロール漁船の網にかかりました。
その後、二匹目の捕獲まではかなりの空白期間があり、1952年12月20日に二匹目がコモロ沖で捕獲されました。
その後、現在までコモロ沖では200尾以上が捕獲されています。
無人の深海調査機などによる調査の結果、コモロシーラカンスは深度150〜700mの深海に生息していることがわかりました。
また、胃内容物の解剖検査により、魚やイカを主食にしていることも判明しています。
インドネシアシーラカンス|L. menadoensis
インドネシアシーラカンスは、1998年にインドネシアのスラウェシ島沖で初めて発見された現生ニ種類目のシーラカンスです。
コモロシーラカンスとの生態的・形態的な差異はほとんどなく、外見的に鱗表面の色彩が異なる程度です。
シーラカンスの寿命は?
シーラカンスの寿命に関してはまだ未知の部分がありますが、さまざまな観点からの科学的アプローチの結果、その寿命は100年以上であると推測されています。
シーラカンスの卵の大きさは?
シーラカンスの卵は、解剖の結果、直径10cm以上あり、魚類の卵としては世界最大クラスであることが知られています。
ただし、シーラカンスは卵胎生なので、この卵が生み落とされることはなく、母体のなかで孵化し、体長30cmほどの稚魚として産まれてきます。
シーラカンスの味は?
シーラカンスは現地民に食べられたり、海外の調査団によって試食が行われていますが、味がなく水っぽく、ブヨブヨしていて美味しくないとされています。
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