アマモは、水深およそ1~3mの沿岸の砂泥地に自生しており、日本でも全国各地で見られますが、近年は海洋汚染などの影響によって徐々にその数を減らしつつあります。
アマモの名前の由来
地下茎をかじればわかる
こちらは、アマモの全体的な写真ですが、この写真で茶色の部分が「地下茎」と呼ばれる部分で、ここからランナーという脇芽をだして無性的にも増えていきます。そして、この地下茎の部分が甘い味がすることから、「甘い藻」=「アマモ」になったとされています。
アマモの特徴
花も咲かせる単子葉植物
冒頭でも解説しましたが、アマモは「海草」です。つまり、根があり、茎があり、葉があり、それぞれに維管束(水分や養分を運ぶ管)を持つ高等植物(種子植物)です。ですので、上の写真のようにしっかりと葉脈も持ち合わせています。
また、アマモは種子植物のなかでも単子葉植物(大きく分けるとイネなどと同じ仲間)で、花を咲かせ、種をつけて増えていきます。なお、アマモは小さくて白い水中花を咲かせます。
画像引用:https://twitter.com/KasaiSuizokuen
こちらが、アマモの水中花です。
アマモは海の牧草
沿岸の貴重な一次生産者
画像引用:環境省|アマモ場で見られる生物
アマモは、海の牧草とも言われるように、沿岸砂泥域において、貴重な一次生産者です。アマモの枯れ落ちた葉は、二次生産者であるベントス(底生微生物)の貴重な餌となり、海の食物連鎖ピラミッドの底辺を支えています。
また、多くの魚類・甲殻類の棲家・隠れ場所になるだけでなく、産卵床にもなっています。これら、アマモの持つバイオマスは、藻類とは比較にならないくらい大きいと言えます。
なお、アマモのバイオマスに直接的に依存する海洋生物としては、国の特別天然記念物でもあるジュゴンが最大の生物で、伊勢志摩地方に立地する鳥羽水族館で、国内で唯一飼育環境下の個体を見ることができます。
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さらに、ランナーを作って活発に無性増殖もするアマモの地下茎は、砂泥のなかに根を張り巡らせ、沈殿した窒素分やリン成分を吸収するので、水質浄化の面でも重要な役割を果たしています。
近年、沿岸海域の富栄養化・護岸改修などの影響で、貴重なアマモの群落(いわゆる藻場)が減少傾向にあります。豊かな海を後世に伝えるためにも、今ここで、われわれはアマモを含めた里海の保護・回復に努めていかなくてはなりません。
アマモの分類
広義のアマモとはアマモ科(Zosteraceae)
広義でのアマモとは「アマモ科」の植物を指しますが、日本には3属10種ほどが自生しています。
Heterozostera属
H.tasmanica
Phyllospadix属(スガモ属)
スガモ|P.iwatensis
エビアマモ|P.japonicus
P. scouleri
P.torreyi
Zostera属(アマモ属)
アマモ|Z.marina
コアマモ|Z.japonica
オオアマモ|Z.asiatica
スゲアマモ|Z.caespitosa
タチアマモ|Z.caulescens
Z. muerell
アマモの生活史
画像引用:三重大学大学院生物資源学研究科論文(PDF)
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アマモには2種類の増え方があります。1つはランナーから無性的に増える栄養繁殖で、これは言わばクローン繁殖です。
しかしながら、クローン繁殖の再生回数には限界があり、ランナーで増え続けることはできません。
ですので、生殖株で花を咲かせ有性生殖を行って種子を作り、新しい遺伝子を持つ株を増やしていく必要があるのです。これが、もう1つの増え方である種子繁殖です。
このように、アマモは2種類の繁殖を織り交ぜながら増えていきます。
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