淡水魚の金魚と海水魚の鯛を一緒に飼育するような方法はあるのでしょうか?上の写真は三重県の水族館で金魚と暮らすクロダイです。実は淡水魚・海水魚の浸透圧調整を知れば、その方法はあるのです。
■淡水魚と海水魚の浸透圧調整
●淡水魚は水を飲まず海水魚は水を飲み続ける
濃度の違う2つの液体を一緒にすると同じ濃度になろうとします。淡水魚や海水魚は、各々が体液と濃度の違う水に暮らしているので、常にこの浸透圧を調整しながら生きています。
淡水魚と海水魚の体液濃度は実はほぼ同じで0.9%です(魚類だけでなくほぼ全ての生物細胞で共通)。そして、海水の濃度は約3.5%、淡水は約0.3%です。
淡水魚は自身の体液より濃度の低い水に暮らすため、身体のなかにどんどん水分が入ってきます。ですので腎臓で塩分を濾しとり体内に蓄え、濃度0.1%未満の薄い尿を常に排出して浸透圧を調整しています。なお、淡水魚は水を飲みません。
海水魚は逆に体液の3倍以上の濃度の水に暮らすため、身体からどんどん水分が奪われていきます。このため、常に水を飲み腎臓で塩分を濾しとって濃い尿として排出することにより浸透圧を調整しています。
■淡水魚と海水魚を一緒に飼育する方法
●浸透圧現象が起こらない塩分濃度の飼育水を使う
こちらの動画をご覧ください。淡水魚と海水魚が同じ水槽で一緒に暮らしています。どのようにしているのでしょう?
実は簡単です。
この水槽の水は塩分濃度が0.9%に調整されています。このため、淡水魚も海水魚も飼育水と体液の浸透圧差がなく、水分が過剰になったり奪われたりすることがないのです。
もちろん、塩分に耐性のない淡水魚や薄い塩分濃度に耐性のない海水魚を長期飼育することは困難です。しかしながら、淡水魚や海水魚のなかには汽水域(川の水と海の水が混ざる水域)に暮らす種類や、そのような汽水魚から分化・進化した種類がおり、それらの魚種は何の問題もなく0.9%の飼育水で生きていくことが可能です。
なお、汽水に順応性が高い淡水魚としてはコイ、フナ、メダカなどが、海水魚としてはクロダイ、サヨリ、ハゼ、フグなどが知られています。
また、冒頭のクロダイのように低濃度水に耐性の高い種類を幼魚の頃から順応させれば、完全な淡水で飼育することも可能です。
なお、家庭用水槽で塩分濃度の調整を行うのには、人工海水が便利です。