金魚の種類・飼い方や飼育水槽のセット方法、病気の原因と対処方法など金魚に関する全ての情報を、20年以上の金魚・淡水魚飼育にたずさわる学芸員としてまとめました。
■金魚の歴史と特徴と種類
●金魚はフナの突然変異が祖先
写真:コウヤ養魚場
金魚・キンギョ(学名: Carassius auratus auratus)は中国が原産地で、鮒(チィ)と呼ばれるフナの一種が突然変異で赤くなったものを人為的に固定したのがその始まりです。
その後、長い年月をかけ世界中で飼育され、さらなる突然変異や交配を積み重ねた結果、実に様々な品種が作出されています。
●金魚の寿命や大きさ
金魚は淡水性の魚で、主に水草などを食べますが、小昆虫などの無脊椎動物も食べる雑食性です。また、塩分に対する耐性も強く、弱い汽水ならば常時飼育も可能です。寿命は10~15年ですが、ギネス記録によると40年以上も生きた長命な個体もいます。また、大きさは30cm程度になりますが、記録によれば全長60cm体重3kgにも成長した個体もあります。●通販で購入できる金魚の種類
金魚はホームセンターなどでも簡単に購入できますが、安価に大量販売されているものは品質が低い場合が多く、購入後すぐに病気になってしまうことも少なくありません。専門の通販ショップで選別された優良個体を購入することをおすすめします。以下に、一般的に通販ショップで購入可能な金魚をご紹介します。高級金魚の入門種としておすすめなのがリュウキンですが、そのなかでも更紗リュウキンは高い人気があります。
オランダ獅子頭も入門種としておすすめの頑健な育てやすい品種です。
朱文金は原種のワキンに近い種類でとても買いやすく頑健な品種です。
シックな外見が人気なのがクロデメキンです。本品種の黒色は赤い色素が大量にそんざいするため黒く見えているので、歳をとって色素が薄くなると赤色になるクロデメキンも少なくありません。
白い体に赤い頭部が「丹頂鶴」に似ていることから名前がついた金魚です。比較的飼いやすい品種となります。
ちょっと変り種の品種が水泡眼です。作出量が少ないので、量販店などでは若干入所の難しい品種となります。
水泡眼に近い品種の頂天眼は、目が上向きについている変わった品種です。
涼しげな黒鉄色が人気の品種が青文魚です。
金魚のなかでも飼育が難しく、最高級金魚のひとつされるのがランチュウです。
■金魚水槽のセット
●オールインワンの入門キット
金魚をはじめて飼育するのに最適なのがこちらのようなオールインワンになったタイプの水槽セットです。一般的に好まれるのは30cm水槽タイプですが、水量が少なく水質が安定しないため金魚が病気になりやすく、あまりおすすめできません。少し大きめのこちらのような40cmタイプがおすすめです。また、濾過システムは投げ込み式のエアーフィルターなので、初心者の方にも管理がしやすく便利です。
本格的に金魚飼育を目指すのならば、スタートキットとして60cm水槽クラスのセットを購入することをおすすめします。濾過槽はエアーフィルターよりも能力の高い上部濾過槽が付属しており、LEDの水槽照明も同梱されています。
●こだわりの水槽・ろ過槽でオリジナル金魚水槽を
ワンランク上の金魚飼育を目指すのならば、水槽セットでなく、水槽・濾過槽・照明・周辺機器を個別で揃える必要があります。それぞれにおすすめのものをご紹介します。・おすすめの水槽
オリジナル水槽におすすめなのが、こちらのようなオールガラス水槽です。インテリア性が高く、リビングや玄関にもとてもマッチします。
・おすすめの濾過槽
大切な金魚を健康的に飼育するためには、何よりも水質を浄化する濾過槽にこだわりたいものです。水質維持の能力が圧倒的に高いのがこちらのような外部密閉式濾過槽です。様々なメーカーから安価なものなども発売されていますが、20年以上の飼育業務経験から、おすすめできるのは「エーハイム2213」の一択です。少々価格は高くなりますが、安価なタイプに比べると故障が少なく、交換パーツなども個別に用意されています。
・おすすめの照明
水槽のLED照明は、水槽に直接乗せるタイプでなく、こちらのように水槽枠からリフトするタイプが水槽のメンテナンスなども行いやすくおすすめです。また、水槽からリフトしていると水蒸気の影響で故障が少ないのも安心です。
・おすすめの周辺機器
大切な金魚を飼育するのなら、万が一の安全策として、濾過システムは外部濾過槽と投げ込み式エアーフィルターの併用をおすすめします。メインの外部濾過槽がトラブルで停止しても、投げ込み式フィルターがあれば酸欠や水質悪化を防げます。また、外部式濾過槽は、その構造上、飼育水の溶存酸素量が少なくなりますので、常時エアーフィルターで酸素供給をすることをおすすめします。
金魚は基本的に常温で飼育できますが、冬期は保温して育てたほうが無難です。また、病気になったときなどは水温を上げる治療法がありますので、水槽ヒーターは準備しておきたいものです。ヒータには安価な一体型のオートヒーターもありますが、細かい温度設定ができない上、サーモ部分が破損すると暴走過熱してしまいますので、必ずサーモとヒーターが別になっているタイプをチョイスしてください。
金魚水槽の水換えグッズとしておすすめなのがこちらのような底面掃除用のキットです。金魚の病気の大きな原因の一つに底砂の汚れがあります。水換えは、ただ水を換えるだけでなく、ついでに底砂の汚れもとるようにしましょう。
日常の水槽メンテナンスで一番面倒に感じるのがガラスのコケ掃除です。こちらのグリーンカットを定期的に使えば、ガラスにコケが発生しにくく、魚体や水草への影響もなく便利です。
■初心者向け金魚の飼い方
●水槽セットから飼育開始
水槽をセットしたら、いよいよ金魚飼育の開始です。セットしたばかりの水槽は濾過槽の浄化バクテリアが十分でないため水質が急激に悪化しがちです。もっとも金魚をロストしてしまいやすい時期となります。
こちらのような水質浄化バクテリアを水槽の飼育水に添加することをおすすめします。
また、飼育水を金魚の好む水質に近づけてくれるのが、こちらのような水質調整剤です。
もちろん、バクテリアや水質調整剤を使わなくても金魚の飼育開始は可能ですが、最低限カルキ抜きは使って水道水の塩素を除去するようにしてください。
●水温によって餌の種類と量・水換え頻度を変える
・春から秋:水温15℃以上の季節
金魚飼育の基本は餌やりですが、季節により(飼育水温により)餌の種類と量を変えてください。春から秋にかけての水温15℃以上の季節には、栄養分の多い配合餌料を中心に与えていきます。一度にあげる量はすぐに食べきれる量が適切です。水槽内に餌の残りが沈殿すると、急激に水質が悪化して金魚が調子を崩す原因となりますので十分気をつけてください。
この季節には、最低でも1日に2回、朝と夕に餌やりをしてください。金魚はとても大喰いな魚です。空腹が続くとすぐに調子を崩してしまいます。
この季節は活発に餌を食べて、活発に排泄をするので飼育水の水質悪化のスピードも速くなります。週に1回を水換えの目安にするとよいでしょう。なお、1回の水換えで交換する水の量は多くても1/2、できれれば1/3程度にしてください。1/2よりも多く水を換えると、水質が急変するので金魚が病気になりやすくなります。
配合餌料としてイチオシなのが、こちらのテトラフィンです。金魚の体調や飼育水の水質に悪影響を与える「つなぎ成分」が少なくされているので、たくさんあげても大丈夫です。また、金魚の健康を考慮した各種栄養素、鮮やかな体色を出すために必要な色素などが配合されています。
・冬場:水温15℃以下の季節
水温が15℃を下回ると金魚は代謝が落ち、不活発になります。この季節は一日に1回、もしくは二日に1回の少量の餌やりで十分です。それ以上餌を与えると、腸内で餌が貯留し体調不良を引き起こします。また、この時期は餌を食べてから排泄するまでの時間が長く、配合餌料は腸内で悪化しやすいので、赤虫やミジンコなどの餌が適切です。
乾燥赤虫として、実際に使用してきて一番おすすめなのがこちらのものです。冬期の基本食として使用してください。
また、乾燥ミジンコならこちらの商品がおすすめです。ミジンコは甲殻類(エビやカニの仲間)なので、赤い色素を含んでおり金魚の色上げにも効果があります。
・金魚の嫌う水温は20℃~23℃
飼育水を常温にした場合、春や秋の水温は20℃~23℃になります。実は、この水温域が金魚がもっとも病気になりやすい水温です。これは、金魚を病気にする細菌やウィルスが最も活発になる水温だからです。この時期にはサーモヒーターを使用して水温を25℃以上にすることをおすすめします。
■金魚の病気と治療法
ここからは、金魚に見られる病気とその対処法や治療法を解説します。●尾腐れ病
写真:http://toadlife.blog53.fc2.com/blog-entry-265.html
尾腐れ病は、「フレキシバクターカラムナリス」などの細菌感染により引き起こされる病気です。症状として、まずヒレの先端が白くなり、症状が進むと尾が腐ったように溶け落ちます。放置しておくと、尾から出血し、傷口から二次感染をおこしてしまいます。
治療法として簡単で効果の高いのが「塩」です。水量から計算して濃度が0.2~0.4%になるように飼育水槽に塩を入れてください。塩分濃度が0.5%を超えると、金魚は浸透圧調整ができなくなりますので、くれぐれも注意してください。また、細菌は金魚だけでなく、水槽全体に繁殖していますので、水槽ごと塩で殺菌するのがおすすめです。
塩を入れたら3~5日はそのまま飼育します。症状の改善が見られたら、1日おきに1/3ずつ水換えを数回行い、徐々に塩分濃度を下げていきます。くれぐれも、一気に水換えをしないようにしてください。
なお、細菌感染による治療として最も簡単で効果も高く安全なのが「塩」です。多くの金魚の病気は「塩」で治すことができるので覚えておきましょう。
●穴あき病
写真:http://kyuudousya.blog.shinobi.jp/
穴あき病は、エロモナス属細菌の感染を引き金とし、その部位に細菌類が二次繁殖することで引き起こされる病気です。もっとも効果的な治療法は、やはり「塩」で、あわせて水温を25℃以上にすると効果的(高水温ではエロモナス属細菌が増殖しにくいため)です。
また、穴あき病に特に効果のある薬がパラザンDです。塩で症状が軽快しない場合は使用をおすすめします。
●まつかさ病
写真:http://www.geocities.jp/kazupi2006/byouki
まつかさ病は、ウロコが逆立ちまるで松ぼっくりのようになってしまうエロモナス細菌性の病気ですが、その発症のメカニズムはいまだ解明されていません。非常に治療の難しい病気ですが、上述の「塩」「パラザンD」で治癒するケースもあります。
この病気は、なによりも予防が肝心です。水換えや掃除を怠り、水質や環境が悪化した水槽で発症するケースが多く見られます。常に水槽の環境を清潔に保つように注意しましょう。
●白点病
写真:http://noumin777.cocolog-nifty.com/
金魚飼育をしていると、必ず経験するのが白点病です。白点病は、原生動物の一種である白点虫(別名:イクチオイフリウス)による寄生虫病です。致死率が高く、伝染力も強い病気なので、金魚の病気のなかでも最も危険な病気の一つです。
目視で発見できる時点で、すでに水槽中に白点虫が蔓延しており、その卵も水槽や濾過槽に蔓延しています。成虫には治療薬が有効ですが、卵には効かないので、根気よく一週間おきを目処に数回にわたり塩や薬剤を投入する必要があります。また、白点虫は高水温に弱いという特性があるので、初期段階であれば水温を28℃以上に上げるだけで駆除できる場合もあります。
なお、「塩」は細菌性の病気の場合と同様な濃度で投入してください。
また、塩だけで症状が軽快しない場合はグリーンFの併用がおすすめです。
・転覆病
写真:http://plaza.rakuten.co.jp/demedeme/
ランチュウやリュウキンなど体型が丸い品種がかかりやすい病気で、文字通り腹を上にして転覆してしまうのが症状です。その原因はいまだ解明されていませんが、経験則として「低水温時に配合餌料を与えすぎる」ことにより誘発されるケースが多く見られます。
水温を30℃近くまで上げることで治癒することもありますが、治療の非常に難しい病気の一つです。
■金魚の産卵と稚魚の世話
写真:http://pxyg.blog50.fc2.com/blog-entry-2140.html
●金魚の産卵期は?
金魚は秋口に卵を持ち始め、そのまま越冬します。そして春がすぎてゴールデンウィーク頃、水温が18~23℃に上昇し始めるタイミングで産卵を行います。産卵期には、メスはお腹がパンパンになり、オスは鰓の周辺に「追星」と呼ばれるコイ科魚類特有の白っぽいブツブツが現れるのでその時期がわかります。産卵期になると成熟したオスとメスは盛んに追いかけあいをするようになります。
●金魚の産卵場所は?
金魚は水草などに付着性の卵を産み付けますが、飼育環境では水草よりも下のような人工の産卵巣などを使用するほうが清潔で卵の孵化率もよくなります。●卵はどうすればいい?
産み付けられた卵をそのまま親と一緒にしておくと、残念なことに親は卵を食べてしまいます。ですので、産み付けられた卵は産卵箱などに回収し、エアレーションをして酸素が豊富で清潔な環境で孵化を待ちます。水槽が一つしかない場合には、下のような産卵箱が便利です。●孵化した稚魚の世話
孵化した稚魚は全長5mmと小さく、口も細いため普通の餌は食べられません。最もよいのは生きたミジンコを採集してくることですが、都会ではなかなかそうもいかないでしょう。そのような場合におすすめなのが、ブラインシュリンプと呼ばれるエビの乾燥卵です。この乾燥卵を塩水に入れて25℃以上に加温すると、半日ほどで幼生が生まれてきます。この幼生を餌として金魚の稚魚に与えるとよいのです。こちらがブラインシュリンプの乾燥卵です。必要な分だけ塩水に戻して使います。
自家製の装置でブラインシュリンプを孵化させてもよいのですが、こちらのような孵化器があると大変便利です。
また、ブラインシュリンプを用いるのが手間に感じる人は、こちらのような稚魚専用の配合餌料でも育成は可能です。ただし、若干、生残率は下がります。