英虞湾自然再生協議会 > 問題解決のために

問題解決のために

 前項で説明したように、現在の英虞湾の環境問題は、英虞湾に入ってくる「モノ」の量が、出て行く「モノ」の量より多い状態になっていることが大きな原因だと考えられます。

 英虞湾の環境問題を解決し、豊かな自然を再生するためには次のような事業の展開が必要です。

1.英虞湾に流れ込む「モノ」の削減

英虞湾に流れ込む「モノ」の起源は、大きく3つに分けることが出来ます。

  1. 生活系・・・生活排水など日常の生活にともなって排出される「モノ」
    高度経済成長にともない、昭和 40 年代から排出量が増えたのではないかと考えられます。
  2. 産業系・・・事業所からの排水や農地から排出される「モノ」
    昭和 40 年代以降、大型の観光施設等が建設されたことにより事業所からの排出量は増えているのではないかと考えられます。その一方で農地の面積は減少していることから農地からの排出量は減少したと考えられます。
  3. 自然系・・・枯れ草や落ち葉など、野山から排出される「モノ」
    自然の野山からの排出量については植物の植生に関する資料がないことからはっきりしたことはわかりませんが、昭和 20 年代の英虞湾周辺の写真などをみると、周辺の陸域に自生する雑木は燃料用として伐採されたためか現在に比べてかなりまばらな状態であり、野山からの排出量は増えているのではないかと考えられます。

これらの「モノ」の削減のためには、合併浄化槽の普及や維持管理の徹底、下水道施設への接続率の向上などが必要になります。また、かつては里山として管理されていた周辺の雑木林を伐採管理し、木材の活用を図ることなども有効であると考えられます。

上へ戻る

2.漁業による「モノ」の取り上げ

英虞湾に流入した「モノ」は、「食べる・食べられる」の関係(食物連鎖)を通じて、海藻や二枚貝、魚など有用な水産物に姿を変えていきます。漁業には、水産物を「漁獲」することで英虞湾から「モノ」を取り上げ、物質循環のバランスを保つという働きがあります。

英虞湾の中で漁業が盛んになれば、それは英虞湾から効率よく「モノ」を取り上げることになるわけです。

また、真珠の養殖に用いられるアコヤガイは英虞湾の中で増える植物プランクトンを食べて成長します。真珠を取り出した後の肉や、アコヤガイに付着する生き物などをきちんと陸上に取り上げることで、英虞湾から「モノ」を取り上げることが出来ます。

上へ戻る

3.干潟や藻場の再生

英虞湾では、江戸時代から農地の拡大や土地の造成を目的とした干拓、埋立事業が行われてきました。その結果もともと 270ha ほどあった干潟の約 70 %が失われ、現在では 84ha ほどが残っているだけです。

潮の満ち引きにより酸素が豊富に供給される干潟にはアサリやゴカイ、カニなど多くの生き物がすんでいます。これらの生き物は陸から流れてくる「モノ」や海中のプランクトンなどを食べることで、海水をきれいにする働きを持っているだけでなく、人間が潮干狩りを行なったり、鳥などが餌を食べることで、英虞湾からどんどん「モノ」を取り上げていく場所、つまり陸と海の物質循環をつなぐ役割も持っています。英虞湾の奥部では古くから干潟の埋め立てが行われてきたことから、こうした働きがかなり低下していることが考えられます。

また、干潟とともに埋め立てられた浅い海域は、太陽の光が十分届くことからアマモなどの海藻が生える場所になっていました。こういう場所で育つ海藻は海水中の栄養分を吸収して海水をきれいにするだけでなく、魚やエビの稚魚が育つ場所として非常に重要な役割を果たしています。

こうした場所を再生させることでさまざまな種類の生き物が育つようになれば、漁業による「モノ」の取り上げにも役立つことになります。

上へ戻る

4.化学物質の削減

英虞湾の環境に影響を与えることが心配される化学物質として、農薬、合成洗剤に含まれる界面活性剤、船底塗料に含まれていた有機スズ化合物などがあげられます。これらの物質は生物にとって直接毒性があるだけでなく、生物の生理状態を混乱させる可能性があることがこれまでの研究で明らかになっています。

英虞湾に暮らす生き物たちが健康に育つようにするために、これらの化学物質については適正な使用を心がけるとともに、出来る限り量の削減を図る必要があります。

上へ戻る

5.環境モニタリング

1から4にあげたような自然を再生するための事業を実施しながら、その効果について常に検討を行い、より良い方法で自然再生を進めていくことが重要です。そのためには、英虞湾の水質や底質を科学的に調査するだけでなく、英虞湾に関係する陸域を含めた生き物の調査を行っていくことが必要となります。

そのためには英虞湾の各地で、多くの人が連携して調査の体制を構築することが必要となります。

上へ戻る