新しい里海のまちとは

自然を大切にし、自然の力を引き出し、その恵みを大事に使っていく。
その生き方こそが『里海』です。

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大伴家持が「御食つ国 志摩の海女ならし 真熊野の 小舟に乗りて 沖つ漕ぐ見ゆ」(万葉集、巻6-1033)と詠んだように、志摩市は8世紀頃から「御食つ国(みけつくに)」と呼ばれ、市民は農林水産業などを通じて豊かな自然の恵みを享受するとともに、自然に対する畏敬の心をさまざまな伝統行事として継承しながら生活してきました。また、19世紀後半には、英虞湾や的矢湾で真珠の養殖技術が発展を遂げ、非常に高い付加価値を持つ真珠を、自然の中から持続的に生み出すことにも成功しました。

しかし、近年では経済効率重視の開発が地球規模で進んで貴重な自然が失われ、温暖化による急激な気候変動や生物多様性の喪失などが問題となっています。志摩市でも日常生活や産業活動など、市民と自然の関わり方が変化して、豊かな自然の恵みを安定して享受することが難しくなっています。また、流通のグローバル化による農林水産品の価格低下などと相まって農林水産業が著しく衰退しており、豊かな自然と食を主なテーマとする志摩市の観光産業にも大きな影響を与えるだけでなく、産業の活力低下にともなう人口の減少と高齢化の進行により、地域に根ざした文化までが失われる恐れがあります。

自然に恵まれ、豊かで健康な生活を持続的におくることのできる地域づくりに対するニーズが世界中で増大している中で、志摩市は、昭和21年(1946年)に市の陸域の全域と海域の一部が伊勢志摩国立公園の指定を受け、美しい景観や多様な生き物のすむ森や海の保全が図られたこともあり、美味しい農林水産物を提供する農林水産業や、それらの自然の恵みに支えられてきた歴史や文化が残されてきました。その自然の恵みを今後もより一層大切にし、自然の力を引き出し、大切に使っていく。百年先の子どもたちのために、人と自然との新しい関係を築くことが、今私たちに求められています。

御食つ国(みけつくに)
天皇の食料、神に供える御饌(みけ)を奉(たてまつ)る国、という意味。

里海とは

「里」という言葉には「人家のあるところ」という意味があり、例えば「里山」は、人家の集落の近くにあって、農業や林業という形で人々の生活と深く結び付きながら安定した自然環境が保たれている森を意味します(ここで言う「安定した自然環境」とは、その地域に生息する植物や動物の種類や数が大きく変化しない状態であることです)。この里山の概念と同じように、漁業活動などの形で人手が加わることによって生物多様性と生産性が高くなった沿岸の海のことを最近「里海」と呼ぶようになり、海外でも沿岸海域 の環境や資源の管理などの問題解決に有効な概念として、「SATOUMI」という言葉がそのまま使われるようになっています。

里山では、人が自分たちにとって有益な樹木を育てたり、燃料とするために伐採したりするなど、人も生き物のつながりの一部となってその地域に独自の生態系が形成されます。また里海では、森や農地、人々の生活活動から流れ出す栄養が海に流れ込むことで多くの海の生き物が育ち、貝や魚を獲ったり、肥料とするために海藻を刈り取って海の生き物を陸に取り上げることで、栄養の循環が促進され、沿岸域ごとに独自の生態系が育まれてきたのです。

沿岸域
陸地に近い浅い海域と、河川などを通じてその海域に影響を与える陸域のこと。
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志摩市がめざす「新しい里海創生によるまちづくり」とは

最近では、海は漁業活動の場としてだけでなく、観光や海洋スポーツ、海運、海洋教育の場などとして幅広く活用されるようになっています。そこで志摩市では、現状の社会情勢に応じた利用と自然環境の保全のバランスが保たれた沿岸域を「新しい里海」と呼ぶこととし、沿岸域における持続可能な利用の活動を「稼げる!学べる!遊べる!」と表現しています。

このまちづくりは、快適な生活環境を維持するだけでなく、市民と自然が共生する「新しい里海のまち」を応援する人々を国内外に増やし、志摩市を観光で訪れたり、志摩市の産品を購入していただいたりすることで、経済活動を維持して行くことを最終的な目的としています。

稼げる!学べる ! 遊べる!新しい里海創生によるまちづくり

稼げる里海のまちづくりとは

「御食つ国※」と呼ばれる由縁となった水産物を中心に、高品質な農林水産物が持続的・安定的に生産できるようにするとともに、人と自然が共生することで生み出される美しい景観や産品の魅力に誘われ、本市を訪れる国内外の多くの人々を市民があたたかく迎え、交流するなど、地域の資源を活かした産業が盛んなまちづくり。

学べる里海のまちづくりとは

さまざまな機会や出会いを通じて、志摩市の歴史、文化及び産業が、地域の豊かな自然環境の上に成り立っていることを理解し、自然を大切にしながらうまく利用できる市民を育てるとともに、市外から訪れる人々には、本市の豊かな自然とその恵みを持続的に利用する市民の取り組みを深く知ってもらえるまちづくり。

遊べる里海のまちづくりとは

あらゆる世代の市民が、四季折々の美しい風景と美味しい食を楽しみ、それぞれの方法で豊かな自然環境を体感し、地域に残る多様な伝統行事に興じるとともに、市外から訪れる人々もそれぞれに地域の自然や文化、伝統などを楽しむことができるまちづくり。

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「新しい里海」を創生するために

新しい里海を創生するためには、里海が陸域と深く関わって成立していることを考慮することが必要です。志摩市では、海域と海域に影響を与える陸域を「一体の沿岸域」ととらえ、関係者が一丸となって沿岸域の総合的な管理体制を構築することにより、『自然の恵みの利用と保全』を図ることとしています。

地域の自然の利用と保全に真摯に向き合い、生物多様性の保全や低炭素社会の実現に取り組むことで豊かな自然環境と共生し、健康で幸福に生活することが可能な社会の実現をめざすため、平成23年年度(2011年)に「志摩市里海創生基本計画(志摩市沿岸域総合管理基本計画)」を策定し、平成24年度(2012年)には市内の産業関係団体、市民代表による「志摩市里海創生推進協議会」を設置して、「新しい里海のまち・志摩」の実現に向けて順応的に取り組みを進めてきました。現在は平成28年度(2016年)から平成32年度(2020年)までの第2次計画期間となっています。

image-pic-05.jpg志摩市里海創生基本計画(第1次)

志摩市里海創生基本計画の特徴は以下のとおりです。
(1)本計画は、沿岸域の利用と保全に関わる関係者が連携して作成し、取り組みを進めるためのものであり、自治体として国内初となる『沿岸域総合管理計画』です。
(2)本市の豊かな自然環境の保全と地域の活性化を一体的に進めるための計画です。
(3)市民や関係団体、事業者などとの連携を重視する計画です。
(4)取り組み状況を把握し、その評価を行い、自然環境や社会情勢の変化に適応しながら継続して取り組みを進めるための計画です。

「志摩市里海創生基本計画」は、志摩市役所本庁里海推進室及び各支所、市内図書館(室)で閲覧していただくことができるほか、下記からPDFファイルをダウンロードしていただくことができます。

ダウンロードリンク

第1次志摩市里海創生基本計画(平成24年度~平成27年度)

志摩市里海創生基本計画に基づく取り組みの評価及び計画見直しに関する提言書(第1次 平成24年度~平成27年度)

第2次志摩市里海創生基本計画(平成28年度~平成32年度)